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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

「林住期」
五木寛之著(幻冬舎1470円)

人生論である。ただこれは青春の惑いの中にある青年を対象としたものではない。定年を迎えた60歳以降の高年者向けであるのが、いかにも団塊定年が話題になっている今風だ。

「林住期」という言葉を覚えたのは確か10年ほど前。やっかいな病気がみつかり手術をした後、家で養生していたころに女性のエッセイストの本の中にあった。賀状にもそれを引用したような記憶がある。ともあれ五木によると人間の林住期は50歳から75歳の25年間という。そして林住期こそ人生の黄金の収穫期、ハーベストタイムにしなければと説く。
五木は言う。林住期を迎えるのは着陸ではない、離陸、テイクオフだと。林住期までの学生期、家住期はそのための準備と滑走だったのだと。これはなかなか新鮮な言葉だ。生活するために働いてきた家住期から、「生きるために生きる」林住期にテイクオフしようと呼びかける。

 そのためには50歳からの準備が必要で、50歳の家出まで説く。なかなか過激である。吉田兼好の徒然草にある「死は前よりしもきたらず」「かねてうしろに迫れり」を何度も引用して、人間生まれるときも一人、死ぬときも一人、ならば林住期を充実させ、自己本来の生き方に向き合おうと言う。

本を読む必要もないほどに目次ですべてを語っている。「人生の黄金期を求めて」「暮らしのためでなく働くこと」「燃えながら枯れていくエネルギー」「人が本来なすべきこと」「人がジャンプするとき」。「『林住期』の世代こそ文化の成熟の担い手」「『林住期』には本当にしたいことをする」「50歳からの家出のすすめ」…といった具合。

軽いが本当は奥深いと言えるのかもしれない。まあ人生論の手合いは何だってそうではある。評論家の斉藤美奈子は、五木の「大河の一滴」を「辻説法のお手本」と切り捨てる。言いえて妙である。「林住期」もまさに、辻説法である。

【ジャーナリスト・小野増平/2007.12.01】


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