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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

64(ロクヨン)
横山秀夫著(文春文庫・上下各640円+税)

昭和64年(1989年)はわずか7日間だった。昭和天皇の崩御によって、1月8日から「平成」になる。新聞記者をしていた私は当時、総理官邸クラブにいて、その移り変わりを取材していた。それだけに、64年(ロクヨン)はとりわけ感慨深い年である。

この7日間の間に起きたD県警の未解決事件が、この小説のテーマになる。当時7歳だった雨宮翔子ちゃんが誘拐され、身代金を犯人に取られ命も奪われる。事件から14年たち、時効まであと1年となった2002年。主人公・三上義信はロクヨン当時、誘拐事件にかかわった刑事で、今は広報官になっている。そして、14年前のロクヨン事件と酷似した誘拐事件がD県警管内で発生する。

犯人は誘拐した少女の父親、目崎正人にロクヨン事件と同額の2000万円を要求。電話で次々と引き回したあげく、その2000万円を燃やすよう指示し、大金が灰になる。「再ロクヨン事件」の犯人は、かつてのロクヨン事件の被害者の父親、雨宮芳男だった。翔子ちゃんを失った雨宮は、「あ」から「ま」行まで電話帳にのっている全ての番号に電話をかけ続ける。14年かけて目崎の声にたどり着き、犯人だと確信する。恐ろしいまでの雨宮の執念だ。再ロクヨン事件は雨宮が目崎をハメるための狂言誘拐事件だった。

広報と記者クラブの軋轢、主人公の1人娘が失踪する家庭問題、組織と個人の相克、ロクヨンをめぐる刑事部と警務部の全面戦争が息詰まる緊張感の中で展開されていく。登場人物は150人を超える。いささかてんこ盛り過ぎるが、警察内部の縄張り意識、記者クラブの争いのすさまじさを描く筆力に圧倒される。筆者は新聞記者出身だけに、説得力があるのだ。私も記者経験が長いので、共感できるところが多くある。

何をしなくてもしんどい真夏の時期だったが、上下巻で700ページを超える大作を一気に読み終えた。最初は主人公の葛藤がいささか重かったが、後半にいくほどのめりこんでいった感じだ。ロクヨンは、映画にもなった。佐藤浩市主演で昨年、前編と後編が相次いで公開されて話題になった。原作を読んでから見ようと決めていた。究極の警察小説がどこまで描かれているのか、観るのを楽しみにしている。

【ジャーナリスト 枡田勲 2017/8/18】


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