《13年半》

「ある日突然」というのは、このことだろう。2004年10月5日午後3時ごろ、廿日市高校2年だった北口聡美さん(当時17歳)が、自宅で刺殺される事件が起きた。あれから13年半。宇部市に住む35歳の容疑者が逮捕された、というニュースが飛び込んできた。別の事件で採取された指紋とDNA型が、事件現場で見つかっていたものと一致した、というのである。

自宅の廿日市市上平良は、私の住まいから歩いて10分もかからない。白昼に女子高生が殺される衝撃的な事件だけに、いまだにその時のことが思い出される。広島県警によれば、警察官延べ30万人も投入する大捜査を展開してきた。当時、大学生だった私の息子のところにも刑事が訪れ、事情を聴かれた。

現場は何の変哲もない田舎の民家である。顔も目撃され、手がかりも遺し、似顔絵も手配されているのになぜ捕まらないのか、と多くの人が思った。事件の情報提供を呼び掛けるチラシも手にした。広電宮島線の電車で帰宅する度に、事件の情報を呼び掛ける車内放送を聞いた。しかし、有力な手掛かりがなく捜査は難航していた。近所で残忍な事件が起き、犯人が捕まらない状況がつづいているのは、何だか落ち着かないものである。

この事件の話題になると、「流しの犯行では」とか、「外国人の犯行で既に国外に逃げているのでは」という話になったものだ。取り調べで詳しい状況が明らかになるだろうが、容疑者は聡美さんと面識はなく、たまたま通りすがりで、わいせつ目的のようだ。容疑者が捜査線上に挙がっていなかったのもうなずける。

迷宮入りかと思われていた事件が、こんな形で解決するケースはままある。DNA鑑定など科学技術の進歩が背景にある。それにしても、容疑者が別の事件を起こしていなかったら、ずっと分からなかったと思うと、ゾッとする。13年半、容疑者はどんな気持ちで生きてきたのだろうか。

ただ、事件が解決しても、家族の気持ちは晴れることはないだろう。私も聡美さんと同じ高校に通った娘がいるので、時が止まってしまった悲しみは推察できる。ほんの少しでもモヤモヤした胸のつかえが和らげば、と願うばかりである。電車の中であの放送を聞かなくてもよくなったのが、せめてもの救いだ。

【午睡/2018.4.16】