君の膵臓をたべたい
住野よる著(双葉社・1400円+税)

「キミスイ」の略称がつくほどのベストセラーになった。それにしても、「君の膵臓をたべたい」とは、何という衝撃的なタイトルだろう。この題名だけ見ると、ホラー小説かと引いてしまう。だが、中身は「青春純愛小説」とで言ったらいいのだろうか。

主人公の男子高校生は、友達もおらず、友情や恋愛にもあまり興味がなく、本ばかり読んでいる内向型の性格である。ある日、たまたま病院のソファーに置き忘れていた「共病文庫」という一冊のノートを見た。それは、膵臓の病気で余命1年と宣告されたクラスメイト「桜良」の日記だった。偶然その事実を知ってしまった僕に桜良は「病気のことはみんなに秘密にしてほしい」と頼む。

それから、正反対の考え方を持ち、恋人でもない2人の交流が始まる。彼女の「死ぬまでにやりたいこと」に僕は付き合う。焼肉やスイーツの食べ放題、一泊旅行…。主人公の名前がなかなか出てこず、「地味なクラスメイトくん」「仲の良いクラスメイトくん」「秘密を知っているクラスメイトくん」「根暗そうなクラスメイトくん」…と彼女の心境の変化で変わっていく。最後の最後に名前が出てくる手法が、なかなか面白い。

病気のヒロインがどうなるのか? よくある結末ではなく衝撃の展開になることだけは言っておきたい。終わりの部分で、その切なさに思わず胸が熱くなった。エンディングがなかなか爽やかで、読後感がいい。このタイトルは「自分の好きな人の中で、自分の魂が生き続けてほしいとの思いを込めた秘密の暗号」のように思える。

「きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して生きるって呼ぶんだよ」。「私たちは皆、自分で選んでここに来たの。偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今まで病院にいたのも、選んできた選択と、私たちが自分の意志で出会ったんだよ」。なかなかいいセリフと出会う。生きる勇気を与えてくれる一冊、とお勧めしたい。

【ジャーナリスト 枡田勲 2017/10/13】