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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

7年遅れ(1)
 一人で飲んだ。美酒なのに、飲みながら涙が流れてしまった。
 登校拒否、家に引きこもり、高校中退。そして、教会の手伝いから少しずつ社会復帰し、大検を受けて、大学受験。この春、九州の大学から合格通知が届いた。もうすぐ26歳になる息子のことである。世間一般でいえば、恥ずかしくて隠しておきたいことだろう。あえて、書き記しておきたいと思うようになったのは、息子の気持ちがやっと吹っ切れたからである。私自身、もう一度息子の軌跡をたどりながら、気持ちの整理をしたいという思いもあった。同じような境遇の方に、少しでも参考になれば幸いである。

 今から10年前になる。息子が高校2年生の時だった。学校から息子が休んでいるという知らせを聞いて、「えっ」と驚いた。うろたえもした。毎朝、弁当を持って学校に行っているはずなのに。本人に確かめたら、学校に行かず近くの公園で弁当を食べていたという。登校拒否の始まりだった。

 その日から妻と一緒に、何とか学校に行かそうとする苦闘が始まった。最初は車で学校まで連れて行った。それがますます学校に行くのを難しくしていることに気づかない。そのうち、朝起きると「お腹が痛い」と家を出ることができなくなった。学校の担任の先生が迎えに来るが、どうしても行けない。担任が迎えにくることも、逆に重荷になっていたことも、後から知った。「学校だけは出ていないと、将来ちゃんとした仕事に就けないよ」という説得は、当時の息子には苦痛以外の何ものでもなかったのだろう。

部屋に閉じこもる日々が続くようになった。カウンセラーや病院へ連れて行こうともしたが、ますます息子を追い詰めただけだった。息子の悩みが理解できない日々。親失格だと私自身悩んだ。

 田舎の親や兄弟、親戚から息子のことを聞かれると、いつもうやむやに答えてはぐらかした。「登校拒否で家に閉じこもっている」なんて、とても言える話ではない。自然と周囲に息子のことを隠すようになった。見栄もあった。「おまえが過保護にするからだ」「あなたが小さいころほって置いたから」。たびたび夫婦喧嘩にもなった。
引きこもりは三年半続いた。
【午睡/2002.04.26】


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