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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

7年遅れ(2)
 息子が部屋に引きこもり始めた当初は、何とかして学校へ行かす手立てはないかと、妻と一緒にもんもんとする日が続いた。

 息子のガールフレンドが、自宅に来て励ましてくれた。もちろん、それで学校に戻れるのなら苦労はない。何が原因か、と聞こうとするのだが、親子の会話になかなかならない。不登校関係の本を読んだり、知人に相談したりしたが、不登校には子ども一人ひとりそれぞれの事情があって、ひとくくりにできない。あれこれ考えている間に、月日ばかりが過ぎていった。

 息子は、幼稚園の時に広島市から他都市に転校、小学校高学年で今度は東京に転校。中学生で広島に帰ってきた。いずれも私の転勤について動いたのである。長男でいささか過保護、過干渉に育ったせいか、神経質で甘えん坊、ちょっと気が弱い。中一時代にいじめにあったこともある。東京時代、サッカークラブに入っていたせいで、サッカー少年だった。広島に帰ってきても、サッカー部で活躍していた。

 いささかサッカーには自信があったのだろう。サッカーの強い高校に入って、部活動を始めた。後から知ったのだが、サッカー部の先生は「なかなか上手い」と目を付けていたらしい。本人は中学時代と違うレベルに、自信をなくして「挫折感」を味わったようだ。そして、身体的欠点(周りから見ると全くそうは見えないのだが)をヤユされて、サッカー部をやめ、学校にも行けなくなった、というのが不登校のおおまかな流れである。
 三年半の閉じこもりの間、息子の楽しみは映画と音楽だった。WOWOW放送で毎日、映画三昧。今でもビデオに録画した映画作品が約三百本残っている。なかなかいい作品を録画しているので、時々鑑賞させてもらっている。「映画は総合芸術だから、いいんじゃない」と閉じこもりを相談した知人がアドバイスしてくれた。閉じこもり中も映画論議を息子と交わしたことが何回かある。

 本人にとっては苦悩の日々だったのだろうが、家庭内暴力もなく、閉じこもりは比較的穏やかだった。救いは、外に出られない息子が、毎週末、家族一緒で出かける教会だけはついてきたことだ。息子は生まれた時からの信者。外部の世界で唯一心がなごむ場所が教会のようだった。
【午睡/2002.05.30】


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