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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

7年遅れ(5)
 3年半の引きこもりから、息子はコンビニのアルバイトができるまでになった。この間、すべてすんなりいった訳ではない。社会に適応していくため、懸命に努力をしていた。親としては、変にアドバイスせずに見守ってやることに徹した。「見守ってやること」は、不登校、引きこもりの辛酸をなめてきた中で、私たち夫婦が学んだことだった。
 コンビニのアルバイトは接客業である。すばやくレジを打ち、商品を袋に詰める作業は、慣れればそんなに難しいものではない。それでも、気持ちのいいくらいに巧くさばく人と、何とかならないかと思うほど「どんくさい」人もいる。息子は最初「しんどい」と言っていたが、2、3カ月もしたら、すっかり慣れたようだ。24時間営業なので、夜の時間もバイトするようになった。半年、1年が経過した。バイト仲間と一緒に、一杯飲んだりする時も持つようになった。やっと人並みの「青春」が訪れたようだ。
 ある時、こんな会話を交わした。「専門学校に行きたいのだが」「いいよ。何を勉強したいのか」「園芸関係を考えている」
 バイトは時間給700円―900円の世界である。長く勤めていても、先は見えている。単純作業でもある。「このままではいけない、やっぱりそれなりの学歴や専門技術がないと普通の仕事に就けない」と将来を考えたのである。だが、目指す専門学校へは高卒の資格がいることを知った。それなら大検を受けて、大学を目指そうと考えたようだ。不登校の時、「将来のために高校や大学へ行った方がいい」と何度も言って、高校に行かせようとしたことか。「したいと思った時が本当の勉強なんだ」とつくづく思う。
 大検を受けようと決めたのは、春先のことだった。早速、大検受験の予備校を探した。バイトをしながら受験生活が始まる。曲折を経て、予備校に通い始めた時は24歳になっていた。 長い空白があるだけに、受験勉強といっても簡単ではない。ほとんど忘れていて、基本からやり直しである。始めたころ、勉強部屋からため息ばかり漏れてきた。息子は大変だったろうが、私たち夫婦にはなかなか興味深かった。それだけ年を重ね、余裕ができていたということだろう。親としては「1年間休まず教会のお手伝いに通ったのだから、大丈夫。今年ダメなら来年があるさ」という気持ちだった。
 幸いなことが二つあった。一つは、高校2年の途中まで行っていたので、大検の受験科目が少し減ったこと。さらに、年1回だった大検が、この年から8月と11月の2回になった。2回のうちに受かればいい、というのが息子のプレッシャーを和らげてくれたと思う。神に感謝した。
【午睡/2002.08.30】


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