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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

7年遅れ(6)
 昨年8月、息子は大検の試験を受けた。数科目の受験で、本人は「できが悪かった」としょげていたが、何とか1回で受かった。その段階で25歳。それから、すぐに大学受験に切り替った。受験まで半年もない。
 小中学校時代、怒ったりすかしたりして、いやがる息子を勉強をさせようと無理強いしたものだ。挫折した息子にとっては、親に強制されるのではなくて、自分から積極的に勉強せざるを得ない立場。これが本当の勉強かもしれない。ある程度、歳を食っているだけに、客観的に見れる部分があったのではないか。
 教会の花の手伝いをしているうちに「園芸関係に進みたい」という目標も見つけた。全国の大学から園芸関係の学部を自分で探し、それに合わせた受験勉強を始めた。長いブランクがあったうえに、時間もないのだから、高望みはできない。親としては、ただ見守ってやるだけだった。
 その年、息子にとって年末までの期間はあっという間だったろう。年が明けた今年の一月、東京、近畿、九州の私学を3校受験した。東京、近畿と相次いで不合格の通知。残る九州の大学に、何とか滑り込んだ。「もう一年浪人すれば、もっと難易度の高い大学が目指せそうだが、耐えられない」と、九州の私学に行くことになった。
 大検予備校には、不登校や高校中退などを経て大学を目指す受験生がほとんど。同じような境遇の受験生に、兄貴のような予備校教師。気持ちが安らいだのか、息子は結構気に入っていた。友達も数人できた。予備校の卒業式、最年長者ということで答辞の役が回ってきた。「回り道をしたが悔いはない」と述べる息子の姿に、これまでの辛い思いがよみがえって胸が熱くなった。
 7年遅れで大学に入った息子は、遅ればせながら青春を味わっている。登校拒否になった高校2年になるまでに、息子は親にさまざまなシグナルを送っていたはずである。それに気付かず、むしろ息子が家に閉じこもるように追い込んでしまった。親として失格の私たちを、息子は立ち直ることで救ってくれた。
 わが家の場合は、「教会」と厳しくてやさしい「牧師」がいた。苦しい時に教会で祈った。息子が家に閉じこもっていても「教会に連なっていれば大丈夫」と牧師は励ましてくれた。それを信じた結果が、現在につながったと思う。
 不登校は年々増える一方だ。学校がすべてではない。人生のいろんなバイパスがあってもいいのではないか。挫折から立ち直るには、信仰のほかに様々な道があるだろう。フリースクール、友人、肉親、本や映画などの出合い…。親としては、いろんな生き方がある、と思うようになることが始まりだろう。そして温かく見守ってやることだ。挫折を乗り越えた子どもは、誰にも負けない「やさしさ」を神が与えてくれたと思っている。
【午睡/2002.09.26】


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