全国の市町村で今、最大の関心事は「合併」である。周りを見渡してみても、合併問題は花盛りだ。私が住んでいる廿日市市も、この春に隣の佐伯町と吉和村を吸収合併する。安芸の宮島が対岸にある海辺から、スキー場のある吉和村まで広大な市域になる。
果たしてこの合併が住民にとって本当にいいことなのかどうか。評価はかなり先にならないと出来ないだろう。
7万を超える自然村を300―500個単位に1万5000台に集約した「明治の大合併」、新制中学校の建設を合言葉に1万500の市町村を最低人口8000人の原則で4000弱に統合した「昭和の大合併」、そして2005年までに3000余を3分の1の1000にしようというのが「平成の大合併」である。
国が旗を振って進めるこの平成の大合併が、どうなっていくのかまだ不透明な部分は多い。その実態と問題点を、全国の現場で合併を取材している12人の新聞記者がレポートしたのが『この国のかたちが変わる―平成の市町村大合併』である。政令都市をめざす静岡市と清水市、県境を越える合併を選択した長野県山口村、合併しない宣言をした福島県矢祭町、中国地方では新市名を「江田島市」に決定後に混迷を深める江能4町の現状など、合併のメリット、デメリットを浮き彫りにしている。現在進行中の合併論議を知るうえで、格好の材料を提供してくれる本だ。
合併特例法による優遇措置という「アメ」と、地方交付税削減という「ムチ」を突きつけられて苦悩する市町村。「この国のかたち」とは作家・司馬遼太郎が文藝春秋に書き続けた文明論の題名である。いささか「パクリ」だが、現状にぴったりくるタイトルだ。この国のかたちは、地方自身が頭を使って考える積み重ねの中からできあがるのでなければ、あまりに悲しい。あとがきに「時代遅れの中央集権体制を崩さねば、21世紀初頭のこの閉そくは突破できまい」と締めているが、まさに同感である。
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