読み始めて、特殊法人や公益法人のあまりのひどさに、あきれるというか、悲しくなった。怒りを通り越してしまった感じなのである。
著者は、建設会社に3年勤めた後、新聞の求人広告を見てK省の特殊法人に中途採用された。副題が「特殊法人の優雅で怠惰な生活日誌」。出勤初日から衝撃的な特殊法人の実態が描き出される。
募集していたのは「事務職員」だったが、「研究員」にされていた。この特殊法人は研究員が60人いることになっている。「実際は30人しかいないので、事務の人も研究員という肩書きにして予算をもらう」という仕組みだ。このホージンの財源は税金など公金だから、国の予算をだまし取るための形だけの肩書き。入社早々、国の補助金サギの片棒をかつがされたわけである。
入社して2週間、まったく仕事がなかった。キャバクラ嬢のような同僚は、ずーっと女性週刊誌、研究員の男性はプロレス雑誌に読みふけっていた。課長が出勤するのは2週間か3週間に1度。それで年収は1200万円くらい。部長になると月に1度くらいしか出てこない。この法人にはタイムカードはない。毎月末に出た日も出ない日も出勤印を押す。
月に2回ほど開く研究会は、御用学者を集めて2時間ほど。それもメーカーの営業マンが講師になって、自社製品のカタログを配って説明して終わり、と言う具合。公費を使って家族で海外旅行、仕事中に英会話の個人レッスン、同僚の女性は転送電話でバイトざんまい。財務省から出向のノンキャリアは、知り合いの業者に物品を購入させてリベートを取っているらしい。理事長は愛人同伴で海外出張。
ホージンの勤労3原則は「遅れて、休んで、働かない」。職員がヒマなのに、主婦のパートがたくさんいて、お茶を飲んで井戸端会議をするのが仕事、等々。これは、国民に寄生するホージン職員の実態のほんの一面である。
著者は10年勤めたホージンを辞め、この内部告発書を書いた。「政府ホージンの不正を見過ごすことは、社会の裏切りである」という意識からこの本を書いたという。ホージンから彼女に嫌がらせがあったのはいうまでもない。
ところで、小泉改革の目玉の一つだった特殊法人合理化計画は、結局は独立行政法人化への看板架け替えに終わっている。法人は官僚の天下り先として存続していく。日本という国が、官僚に食い物にされていることが、この内部告発でわかる。
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