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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

岸信介証言録 原彬久編
(毎日新聞社・2,800円)
 人間の評価は、百年後に、いやもっと後に決まるものかもしれない。イメージがどれほどあてにならないか、というのをこの本を読みながら考えた。

 戦後の歴代首相の中で、岸信介(1896-1987年)は最も人気のなかった首相だろう。学生時代、全共闘の学生運動を体験した団塊世代の一人として、岸に対するイメージは最悪だった。「昭和の妖怪」と言われ、軍国主義復活をもくろんでいる、という非難を受けているのは当然、と思っていた。ところが、それがあまりにも固定化されたものいだと「目から鱗(うろこ)」である。

 若い人は岸信介といっても、知らない人が多いだろう。日米安保条約の改正を強行採決で進めた時の首相である。いわゆる「60年安保闘争」の主役の一人である。1960年6月19日、新条約自然承認の日、国会周辺や官邸周辺は「安保反対」を叫ぶ群集で異様な雰囲気に包まれた。

 警視総監から「官邸は危険だからどこかいに移ってもらいたい」と言われたが、弟(佐藤栄作元首相、当時蔵相)と二人だけになって、ブランデーを飲みながら「とにかく殺されればここ以外にないじゃないか」と冗談を言った記憶がある、と語っている。さらに「国会の周りはデモでナニしていたけれども、後楽園球場はでは数万の人が入って野球を楽しんでいる」とも語っている。

  昭和26年、独立と同時に吉田茂首相が結んだ安保条約は、日本にとっては極端に不利な内容だった。岸の一貫したテーマは、日本の独立の回復にあったという。そのために、最優先で安保改定に取り組み、そして安保論議が予想以上に大きくなって、結局は退陣に追い込まれた。
  著者は、「戦後回帰の軍国主義者という評はあたっていない。むしろ、保守勢力を結集して議会の多数を握り、かつての敵国だったアメリカとの同盟関係を強化するなど、戦後の民主主義にも冷戦構造にも適応したのが、現実主義者としての岸の面目がみてとれる」と評価している。

 岸の娘、洋子さんは安倍晋太郎・元自民党幹事長の妻。つまり、岸は現在の安倍晋三・自民党幹事長の祖父である。娘婿の安倍晋太郎評として「少し評判がよすぎるね。人の下にいるときはいいが、リーダーたる者は、もう少し敵がいなければ駄目だ」と言ったという。いかにも岸の政治家論が出ていて興味深い。
【ジャーナリスト・枡田勲/2004.01.20 】


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