今まで、江國香織の小説を読んだことがなかったし、興味も持っていなかった。
それでも、読んでみようと思ったのは、娘が江國を愛読しているからだった。なぜ若い女性を引き付けるのか。
というわけで、最初に読んだのがこの小説である。そして、若い女性を中心に高い支持を得ている理由が、おぼろげながら分かるようか気がした。気がしただけかも分からないが。
江國といえば、随筆家の江國滋を思い出す。香織の父親である。10年以上前になるが、江國滋の「俳句とあそぶ法」(朝日文庫)を読んで、その軽妙洒脱な文章に魅了された。俳句がより好きにもなった。
娘の香織は今年、直木賞を受賞した。今年は芥川賞で、綿矢りさ、金原ひとみ、という若い2人が選ばれて話題を独占。直木賞の方がかすんでしまったが、受賞した江國と京極夏彦は既に売れっ子の実力派である。
受賞した江國香織が「父からは会話に使う言葉は厳しくしかられた。今の時代より古く、ふくよかな日本語で書かれた児童書や絵本を読み、影響された。正しく美しい日本語に執着がある」語っている。さらに、「恋愛をしている人の、ある種の狂気をはらむ個人的、絶対的真実が好きで、恋愛小説にこだわっている」とも。この親にしてこの娘ありと納得する。
「スイートリトルライズ」も江國がこだわっている恋愛小説である。瑠璃子と聡の夫婦愛と恋、不倫が詩的に表現されている。心のあや、ドキッとするような心理をさらっとした透明感のある文体でつづる。一気に読んでしまった。読み終えた後も、しばらく心が宙に浮いているような不思議な感覚にとらわれた。
これはいったい、何なんだろう。おぼろげなものを確かめるために、また江國の本を手にしている。直木賞の受賞作「号泣する準備はできていた」。恋愛小説は永遠なりか。まさか。江國香織に「はまり」始めたのかもしれない。
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