泥沼化するイラク情勢。連日のように武装勢力とアメリカ軍の衝突で犠牲者が出ている。イラク人、アメリカ兵の死亡者はどのくらいになったのだろうか。日本人ジャーナリストも2人が銃撃されて死亡した。
紛争地には数えきれないほどの涙や、悲しみにあふれている。そういった紛争地でも、ジョークは生まれ、発展する。悲劇の場面だけでなく、厳しい状況の中でも笑いを大切に生きる人々の姿を作者は見てきたのである。
世界各地の紛争地や貧困地帯を数多く巡ってきた作者は、その土地で楽しまれているジョークや笑い話の収集をライフワークにしている。そして、「笑いは世界を救う」との思いを強くしている。「笑っている場合ではない」ではなく、「そういう場合にこそ笑いが必要」というわけだ。絶望や怒り、悲しみ、憎しみから解放するのは笑いなのだと、この本は教えてくれる。この本に載っているイラクのジョーク。
《誘拐事件》
ある時、サダム・フセイン大統領が何者かによって誘拐された。数日後、犯人グループから大統領宮殿に脅迫電話がかかった。「いますぐに百万ドル用意しろ。さもなければ大統領を生かして返すぞ」
《イラクの魚》
問い。イラクでは釣りをしてもなかなか魚が釣れない。なぜか?
答え。魚も口を開けるのが恐いから。
フセイン政権下、公の場での言論の自由は完全に封殺されていたが、その中でもジョークが生きている。
イラク以外にも、パレスチナ、イスラエル、アフガニスタン、東欧、北朝鮮、中国、ミャンマー…さまざまな地域で集めたジョークは、お国柄が出ていて思わず笑ってしまう。確かに、悲しみを癒してくれる力がジョークにはある。ジョークがどれだけ人々の力となることか。日本では笑いをつい「不謹慎」と封じ込める傾向がある。こんな世の中だからこそ、笑いをもっと大切にしたい。
|