副題に「大平泰のラジオコラム」とある。そう。中国新聞論説委員の大平泰さんが毎週土曜日の午後5時半から15分、中国放送(RCC)ラジオでしゃべっている時事解説をまとめたものである。
時事解説といってもアナウンサーとの掛け合いの形で、その時々の話題を上手に料理して飽きさせない。歯切れのいい解説に、ラジオを聴きながら「その通り」と思わず同調することがよくある。
大平さんのラジオコラムは通算9年になる。2003年を切り取ったのは、この年がイラク戦争開始、小泉政権の明暗など内外の大きな節目の年になったから、と大平さんは前書きで述べている。
確かに、この本を読むと、よくも毎週、毎週、いろんなことが起きているものだと感心してしまう。そのなかで特筆されるのは、小泉首相を舌鋒鋭く批判している点だろう。「イラク戦争開始でいち早く米国支持を表明した小泉首相」、「『オーラ』が消えつつある小泉政権2年」、「小泉首相はなぜ被爆者を避ける」「自民党は『小泉党』の様相」などなど。短いキャッチフレーズで分かりやすい小泉語録。世論の人気が衰えない小泉首相の虚像を次々指摘していく迫力は、さすがにジャーナリストである。
政治ネタばかりではない。広島県出身の力士「安芸乃島」の話や「居眠り新幹線」など幅広く論評している。なかでも、「吉永小百合さんと原爆詩の朗読」は秀逸である。吉永小百合さんの原爆詩の朗読を聞かれたことがあるだろうか。そのとき、必ずといっていいほど大平数子さんの「慟哭(どうこく)」が朗読される。詩の中で「しょうじよう」「やすしよう」と呼びかける。「やすしよう」は泰さん、大平数子さんは泰さん母親である。
著者をよく知っているので、もうひとこと付け加えると、こんなに心根の優しい人はいない。言葉には厳しいが、その言葉の端々に優しさがにじみ出ている。この本を読んでRCCのラジオコラムを聴くと、一段と味わいが増す。
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