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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

生協の白石さん
(白石昌則著、講談社・952円)

 「ちょっと重い本は売れないんですよねー」 ある会合の席で、大学教授のため息を聴いた。 「本当ですね。ベストセラーを見ると、軽い感じの本ばかりですね」 そう返答したが、これ実感である。ちなみに今週の廣文館週間ベスト20を開くと、1位が「生協の白石さん」だ。2位が「東京タワー」、このほか「下流社会」、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」「野ブタ。をプロデュース」などなど。読みごたえがある、というより、着想のよさで売っている本がほとんどだ。

 「生協の白石さん」は、中でもアイデアの勝利と言えるだろう。東京農工大の生協で「ひとことカード」の回答を担当する白石さんが、意味不明な質問にも、ちょっと機智をきかせて答えてくれる。それが人気を呼び、学生がインターネットで紹介して話題になった。

 質問 青春の1ページって、地球の歴史からすると、どれくらいなんですか? 回答 皆さんは今まさに1ページずつめくっている最中なのですね。羨ましい限りです。地球の歴史というよりも、私の歴史からすると、目次でいえばかなり前の方です。いつでも呼び出せる様、しおりでも挟んでおきたいものです。

 なんという粋な受け答えだろう。ほのぼのとして、癒される。 ほかにも、「ティッシュを置いてほしい」という要望には、「運がよければ1F入り口前で無料で貰えたり」と答える。このあたりに白石さんの魅力があるのだろう。

 ただ、ため息をついた教授ではないが、実に軽い本である。なにしろ読み通すのに1時間もあればよいのだ。そして、読み終わった後にほんわかしたものが残るが、すぐに消え去ってしまう。ベストセラーを出すこつは、「重厚で中身がぎっしり詰まった」というよりも、「着想がよくて、軽い」をコンセプトに、という時代を象徴するような本かもしれない。軽くなった脳みそにマッチしているのだろうか。

【ジャーナリスト・枡田勲/2005.12.14】


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