女性学、ジェンダー研究者として泣く子も黙る著者の最新作。カラカラと乾いた一書である。“確信犯”としてシングルを貫く女性の「おひとりさま」の老後がメーンテーマ。とはいえ結婚した家族持ちの女性が読んでも興味は尽きないだろう。同じ団塊世代の男の評者は読みながら、「ここまで言うか」とあきれ、爆笑し、そのうち身につまされた。
第1章「ようこそ、シングルライフへ」で始まる本書は、「なあーんだ、みんな最後はひとりじゃないの」と居直る。第2章「どこでどう暮らすか」、第3章「だれとどうつきあうか」、第4章「お金はどうするか」とハウツウ本の体裁をとりながら、女性一人の「おひとりさま」の自由と“後家楽”をうたいあげる。
身につまされるのは第5章の「どんな介護を受けるか」、第6章「どんなふうに『終わる』か」である。死の前日まで元気でいて「ピン・ピン・コロリ」と死ぬのが理想というPPKをファシズムだ、と言い切り、人間のような大型動物はゆっくり死ぬと見切る。そのうえで介護されるノウハウこそ大事と説く。著者の老後を見る目は確かだ。
だれもが老いる。女も男もない。脳梗塞で倒れる可能性も大きい。認知症になったり、アルツハイマーになることも少なくない。介護を受けることになる。著者はあくまで「おひとりさまに必要なのは、プロの介護を受け入れるマナーとノウハウである」として介護される側の心得10か条を挙げる。しかし、これは万人に通用する10か条だろう。
東京都監察医務院に勤務する小島原将直さんのホームページから引用した「孤独死」をめぐる講演録も印象的だ。再引用させてもらうと「死はいつ襲ってくるかわからない。そのためあまりにも妥協して、自分自身のない集団の中の人として人生を終わらせないように日頃から孤独を大切にして生きたいものです」
つまるところ人間は死ぬときは一人ということ。そしてその前段階に介護があるということ。分かりきったことながら本書を読みながらもう一度、この事実を反芻した。重いテーマを笑いながら読み通させるのは著者の幅広いフィールドワークと、それを支える博識があるからだ。 |