「国家の罠」(新潮社)「自壊する帝国」(同)「獄中記」(岩波書店)など話題作を世に問い続けている元外務省主任分析官・作家の佐藤優さんと、”相方“の衆議院議員・鈴木宗男さんの対談。
外務省をめぐる疑惑事件、いわゆる”ムネオ疑惑“で、佐藤さんは背任と偽計業務妨害、鈴木さんは斡旋収賄の容疑で東京地検特捜部に逮捕された。本書はなぜ事件が立件されたかを、外務省の人間関係を中心に二人の立場、視点から解き明かし実名で暴露している。歯に衣を着せない語りは、「そこまで言ってしまうか」と槍玉にあげられた方を心配したくなるほど痛烈だ。
「国家の罠」「獄中記」では、国家権力が「国策捜査」という形でいったん牙をむいてしまったときの恐ろしさを余すことなく描いた。伝家の宝刀を抜いた以上、納めるところに納めないと終われない。著者は513日の獄中生活で身をもって味わったシステムとしての国家権力の恐ろしさと馬鹿らしさを伝えた。
この点、今回の「反省」はもっと泥臭く、生々しい。それが凝縮しているのが巻末の特別付録「本書に登場する外務官僚の皆さん」。実名、顔写真付きで紹介している。個人攻撃といっても差し支えのない激しさだ。佐藤さんは05年2月に東京地裁で執行猶予付き有罪となり、東京高裁で控訴棄却、現在は最高裁に上告中。国家権力がむいた牙にどこまで個人があらがえるか。
二人は「国策捜査に巻き込まれた場合、どれを選んでも上がりは全部地獄」と言う。反省しなければならないのは本当はだれなのか。歯切れのいい国会質問に喝采を贈ったのはだれだったのか。私たち一人ひとりが問われている。 |