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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

「論壇の戦後史」
奥 武則著  平凡社新書(800円+税)

団塊世代には懐かしい論壇の巨人たちが次々と登場する。清水幾太郎、丸山真男、桑原武夫、福田恆存…。本書は日本の戦後の論壇の生い立ちから60年安保を経て、論壇という世界そのものが崩壊状態となる1970年までをコンパクトにまとめている。長く毎日新聞学芸部の論壇担当記者として活躍してきた著者ならではあろうか。

著者によると「悔恨共同体」からスタートした日本の論壇は、岩波書店の総合雑誌「世界」をメーン舞台に天皇・天皇制、俳句の第二芸術論、講和問題、60年安保と華麗な論説を展開した。時代を象徴するような写真が載っている。本書、54ページに掲載されている1947年7月20日付の朝日新聞の写真である。説明には「『西田幾多郎全集』発売を待つ人々」とある。岩波書店営業部前の道路に寝て、同全集の19日の発売開始を待っている人たちの光景である。

行列は発売3日前の16日夕方から出来始めたという。「将校服、つぎはぎだらけのジャンパー、だぶだぶの国民服……さまざまな服装の若者たちが行列を作っていた」(『文芸春秋』編集長だった鷲尾洋三の回顧)。敗戦によって長い戦争、軍部独裁のくびきから解放された“知識人予備軍”の若者たちの興奮さえ感じられる写真である。当時の論壇を支えたのはこうした人たちだった。論客たちも1946年2月時点で、清水幾太郎38歳、丸山真男31歳、福田恆存33歳のころである。読者も論客も若く、新しい時代への期待感に満ちていた。

本書は副題に小さく「1945−1970」と入っている。著者は、70年以降は時代の羅針盤としての論壇自体が成り立たなくなり、「『戦後』の終焉とともに『戦後』論壇が消滅したのは当然だった」と述べる。総合雑誌がかつての輝きを失い、知識人という言葉すら死語となろうとしている今、新しい「論壇」を追い求めるのは夢なのだろうか。

【広島経済大教授・小野増平/2008.7.31】


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