久しぶりに身につまされる青春小説を読んだ。「シューカツ」とは、大学生の就職活動のこと。現実世界でシューカツに励む学生たちと毎日を過ごしている私には、社会との初めての出会いである就職活動で泣き笑い、苦しむ本書の主人公たちの姿が、自分の周りの学生たちとダブって見えた。
本書の主人公たちは早稲田大学をモデルにした鷲田大学3年生の男4人、女3人の若者たち。なかでも飛び抜けた美人ではないけれど、明るく活動的な水越千晴、準ミス鷲田大学で英語、中国語、日本語の3ヶ国語を話す帰国子女の佐々木恵理子、陽気で楽天的な菊田良弘、数字に強い理論派の倉本比呂氏らを中心に物語は展開する。
最難関といわれるマスコミを志望する7人は早々と3年春にシューカツプロジェクトチームを発足させる。合言葉は「全員合格」。どんなにシューカツが厳しくても7人全員が力を合わせてこの試練を乗り切ろうと誓い合う。外は春の嵐が舞っていた。
夏休み、実際に企業で研修するインターン制度で関東テレビに出かけた千晴と恵理子。テレビ局の仕事は新鮮でやりがいがあった。才色兼備の恵理子はこのインターン期間中に早々と見初められ、倍率数千倍といわれる関東テレビの女子アナウンサーに合格する。その一方で理論家の比呂氏は、ある日からシューカツのプレッシャーに耐え切れず引きこもりになってしまう。
志望企業に働く先輩を訪ねるOB、OG訪問。就職意欲を高めてくれる先輩もいれば、働きたくないと思わせる先輩も。自分を売り込むエントリーシートを書くために7人全員で合宿もする。そして本番の就職試験。1次、2次、3次と関東テレビの記述、面接試験をクリアした千晴は役員最終面接で思いもかけない失敗をしてしまう。
シューカツに追いまくられ、心の余裕をなくしかけたメンバーたちだが、引きこもりの比呂氏を訪ね始める。「シューカツへの恐怖や心の弱さ、未来への不安は、チームの誰もが自分の中に抱えているものだ。友人を見捨てることは、自分の心の一部を失うことだった」
ほぼ1年間の大学3年生のシューカツ。さまざまなエピソードを織り交ぜながら本書は7人の大学生が、いかにして社会とのつながりの場所である就職を果たしていくのかを描く。
私の目から見ると鷲田大学生でマスコミを志望する学生たちは、全国の大学3年生の中では、かなりのエリート学生に見える。それでも千晴たち7人を見守る著者の優しいまなざしと、温かい筆致に読んでいる際も、読んだあとも心が洗われ、すがすがしい思いが募ってくるのだった。 |