「時代閉塞」の今日、それを打開するにはマスメディアのあり方を変える必要がある、ということをいま一度いっておきたい。新聞社を良くするためには新聞社のあり方を変えなければならない―。本書の中で著者が何度も繰り返し言っていることである。
マスコミ批判、新聞批判の書は世にあふれている。加えて若者をはじめとした新聞離れは著しい。今や、かつてのリーディングメディア、新聞に期待している若者などいないのではないかと思わされるほどである。それだけに「新聞をよくするために」と正面切って論を展開する本書を新聞関係者にぜひ一読してもらいたい。
新聞をよくするにはどうしたらいいのか。著者は端的に言う。「私の提案は新聞社を株式会社ではない新しい企業形態にする、そして新聞社を解体して、従業員三〇〇人くらいの企業にし、それぞれを独立させる、というものである」。 株式会社はあくまで利益追求を目的としている。株式会社として徹底すれば言論報道機関ではなくなる。大量生産、大量販売の時代は終わった。にもかかわらず大企業=巨大株式会社がそれに固執しているために(新聞も)危機に陥っている―というのである。
それほど耳新しい批判でも、論でもない。“ブル新”批判は昔からあった。だが、批判を改めて声高にしなければならないほど新聞の危機は深まっているということだろう。新聞はもっとジャーナリズム性に徹するべき。それだけが新聞の生き残る道である。記者も会社本位の「会社記者」からプロフェッショナルの「ジャーナリストたれ」と説く。
著者は岡山大学を卒業後、九年間、産経新聞の記者をしていた。その後は経済研究所、大学教授を歴任し半世紀にわたって「株式会社」について研究を重ねてきた。にもかかわらず新聞記者からの転職後、「ずっと日本の新聞の実状と、さらにマスメディアとしてのあり方について考えてきた」と言う。本書を上梓したのも新聞に対するこだわりからだ。
「新聞が危うくなると紙面の質が低下し、報道の自由が失われる。それは国民全体にとって困ったことだし、さらに大きくは文明の危機につながる」。新聞記者として半生を過ごしてきた筆者などには気恥ずかしいほどの言葉だが、真にその通りだと思う。著者の説くところは難しい提案だが、新聞が新聞として生き残るための唯一の方策であるのは間違いないだろう。 |