「出会い」というのは、つくづく不思議なものだと思う。本との出会いもそうである。
いつもなら本を読み始めると一気に読んでしまうのに、なかなか進んでいないのを見つけた娘が、「これだったらすっと読めるのでは」と差し出した一冊がこの本だった。
著者の作品は初めて手にした。2000年に直木賞を受賞し、その翌年、同名の映画が話題になったことも知らなかった。そして、読み始めたら、すっかりとりこになってしまった。歯切れのいいテンポとさわやかな語り口が、読んでいて心地よいのである。251ページのそんなに厚くない作品だが、まさに一晩で読み通した。
文庫本の裏表紙に「僕は何者? 日本で生まれ、日本で育ったけれど、僕は《在日》と呼ばれる。元ボクサーのオヤジに鍛えられ、これまで喧嘩23戦無敗。ある日僕は恋に落ちた。彼女はムチャクチャに可愛らしい《日本人》だった---。
ジャンルでいえば青春恋愛小説というのだろう。《在日》である著者の半自伝的作品といわれている。こんな一節がある。
「言っとくけどな、俺は《在日》でも、韓国人でも、朝鮮人でも、モンゴロイドでもねえんだ。俺を狭いところに押し込めるのはやめてくれ。俺は俺なんだ。いや、俺は俺であることも嫌なんだよ。俺はおれであることからも解放されたいんだ。(略)おまえらは国家とか土地とか肩書きとか因襲とか伝統とか文化とかに縛られたまま、死んでいくんだ。ざまあみろ。俺はそんなもの初めから持ってねえから、どこにだって行けるぞ。
(略)ちくしょう。俺はなんでこんなこと言ってんだ? ちくしょう、ちくしょう…」
元ボクサーだったオヤジがなかなかいい。どこまでも前向きに突き進もうという意味の「GO」という題名にも納得だ。「GO」の後、「対話篇」「映画篇」を読んだ。さらに他のを読んでみたいと思う。金城作品にはまった感じである。
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