先日、神奈川県の湯河原温泉であった大学卒業40周年の同窓会に出席し、久しぶりの親交を暖めた。学生時代の友人はいいものである。酒を酌み交わし、話をしていると長い空白があっという間に埋められた。
そのときに再会した友人が、一冊の本を送ってくれた。それも「夢があるから強くなる」と書かれた著者の署名付きだった。友人は早稲田大学を卒業後、古河電工に勤め、現在その関連会社で役員をしている。著者の川淵さんは早大、古河電工の先輩という関係。「今日的な問題を示した本だ」と書き添えもあった。
読んでいるうちに友人の指摘が納得できた。著者は東京五輪のアルゼンチン戦で同点ゴールを決めたサッカー選手である。サッカーのプロ化に奔走し、1991年Jリーグ初代チェアマンに就任。2002年には日本サッカー協会の会長にもなった。時には強引な手法が「独裁者」との批判を浴びたこともある。だが、この人のリーダーシップなくしてJリーグは発足していなかったのではないか、と思う。
川淵さんは、著書の中で「組織で『トップ』に立ったからといって、その人物が必ずしも組織の『リーダー』にふさわしい仕事が出来るかどうかは別の話ではないか。リーダーとは、地位だけでなく、人間性や指導力、これらを総合した言葉だと思う」と説く。信念や哲学、志を持って仕事に当たる人が真のリーダーだというのである。
南アW杯で日本代表を16強に導いた岡田武史監督は、川淵さんが早大から古河電工に引っ張った後輩。岡田監督のリーダーとしての資質を高く評価している。
サラリーマン30年。「リーダーについて考えるようになったのは、51歳の左遷からだった」という。「時期尚早という人は、百年後にも時期尚早といい続ける」「失敗を恐れて何もしないよりも、失敗を糧としたほうがいい」「実績や前例より熱意で人を動かす」「異分野、異業種に学ぶ」など、著者の言葉は説得力がある。
この本には「結果を出せるリーダーの条件」という副題が付いている。それにしても、日本政界に「リーダー」がいないことを痛感する。政治家たちに、「采配力」を読んでもらいたい。
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