「旅打ち」という言葉をこの本で見つけた。『ギャンブルの旅をこう呼ぶ。響きがいいやね』と記している。著者は競輪好きで知られている。昼間は競輪、夜は夜で麻雀。競馬好きの筆者としてはあこがれてしまう。もちろん、真似はできないが。
麻雀は阿佐田哲也の弟子である。阿佐田さんといえば作家の色川武大さんのことだ。麻雀小説は阿佐田さんの書いた「麻雀放浪記」につきる、というのは同感である。その阿佐田さんと一緒に競輪と麻雀の「旅打ち」をするのだから、凡人のギャンブル好きとは格が違うのである。
そのかっこいい著者が、本音で語ったエッセイが「大人の流儀」だ。無頼派作家の語る言葉に、しばしば「その通り」とうなずく。
『金をすべての価値基準にするな。金を力と考える輩は、さらに大きな金の力で、あっという間に粉々にされる』
『どんな生き方をしていても、人間には必ず苦節が一、二度向こうからやってくる。そんな時、酒は友となる』
『企業の価値は資産、資本金、株価などではない。企業の真の価値は社員である。人間である』
『旅をしなさい。どこへ向かってもいいから旅に出なさい。世界は君や、あなたが思っているほど退屈な所ではない』
著者はご存知の通り、27歳で亡くなった女優、夏目雅子さんの夫である。そして、現在は女優、篠ひろ子と再婚して仙台に住む。「大人の流儀」を読めば、飛び切りの美人女優がこの男にほれるのも仕方がないかな、と思ってしまう。
いっきに読ます「粋な本」である。
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