土曜の朝7時半を毎週楽しみにしている。TBS系のトーク番組「サワコの朝」を見るためだ。30分があっという間に過ぎていく。そして、さわやかな目覚めになること請け合いである。
ゲストはユニークな著名人が多い。楽しいトークに、ゲストの思い出の一曲もかかる。30分が短く感じるのは、司会の阿川佐和子さん(59)の絶妙なインタビューによるところが大きいだろう。
その秘密を知りたい、と手にしたのがこの本である。週刊文春の対談「阿川佐和子のこの人にあいたい」は連載900回を超える。テレ朝系の「ビートたけしのTVタックル」でもレギュラー司会役で出演している。30回以上のお見合いでコミュニケーション術も心得ている。そんな佐和子さんが「インタビューが苦手」「今でも対談に出かけると前は、ビクビクどきどきしている」と書く。
逆に言えば、著者がインタビューの相手に好感を持たれる由縁なのだろう。「どうだ、私のインタビューは上手だろう」と思わすものがあったら、鼻白む。インタビューの上手な人ほど謙虚である。サブタイトルは「心をひらく35のヒント」。この35のヒントには、失敗談もふんだんに織り込んであり、対談のように楽しい一冊になっている。
インタビューの前には、相手のことを調べて準備するのは当然である。そして、質問の柱は3本にし、「あれ?」と思ったことを聞く。会話は生ものと心得る。というのも、準備万端で段取りを決めてしまうと、お決まりの話しかきけなくなってしまう。
なるほどと思う。私もテレビ番組でのインタビューを何回か経験したことがある。事前に質問を箇条書きにして準備し、その通りに進めようとすると、話がはずまないまま終わってしまうことがあった。既知の情報に引っ張られると、自分自身の素朴な疑問や驚きを聞けずじまいになって、面白い話は引き出せない。
「人の話はそれぞれです。無口であろうと多弁であろうと、語り方が下手でも上手でも、ほんの些細な一言の中に、聞く者の心に響く言葉が必ず潜んでいるものです」
さすがに、多くのインタビューをこなしてきた著者らしい言葉である。インタビューが上手になりたい方に必携の著だが、それば別にして豊富なエピソードが実に面白い。久しぶりに夜更かしして一晩で読みきった。今年唯一100万部を超えたベストセラーだけはある。
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