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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

島はぼくらと
辻村深月著(講談社・1500円+税)

瀬戸内海の小さな島、冴島。島に高校がないため、4人はフェリーで本土に通う。島の子はいつか本土に渡る。17歳の高校生仲間が共に過ごせる最後の季節―こんなキャッチコピーを見ると、まさに青春小説そのものである。

実をいうと、この小説の舞台設定は、私の生まれ育った島とほとんど同じだ。違うといえば、同級生がもう少し多いのと、まだフェリーでなくてポンポン蒸気船だったくらいだろう。読みながら何十年前の高校時代の甘酸っぱい思い出が、鮮やかによみがえってきた。

母と祖母の女三代で暮らす、素直な少女、朱里。美人で気が強い網元の一人娘、衣花。父のホテル経営のため、東京から連れてこられた源樹。演劇部員で脚本も書く文学青年の、新。この高校生4人の青春が、島ゆえに抱える問題を絡めながら繰り広げられる。

島という小さな閉鎖社会だけに、より濃厚な人間関係がある。それが良いところでもあり、わずらわしさや欠点でもある。隣同士が、調味料のあるところまで知っているような家族づきあい。一方で激しい憎み合いや、離婚、不倫も。いろんな情報が筒抜けの村社会である。

4人の日常を縦糸に、島の大人たちやIターンした人たちが紡ぐ人間模様が横糸になって、ありきたりの青春小説でない作品に織り上げられている。一気に読みながら、なぜか涙があふれてきた。心を揺さぶられる物語が巧みに織り込まれている。読み終わった後の爽やかさは格別だった。2014年の本屋大賞にノミネートされているのも当然だと思う。

私も高校を卒業して東京の大学に進み、そして故郷を離れたままである。島の小中学生時代の友人とは、今でも広島市内で時々会って酒を酌み交わす。閉鎖社会で育まれた友人たちは、気が置けなくて気持ちが安らぐ。

そんな人間関係がいまだに続いているだけに、島育ちの人にはこたえられない作品である。もちろん、そうでない人にも、いろいろな世代の方にお勧めしたい。

【ジャーナリスト 枡田勲 2014/2/27】


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