街に出て本屋に立ち寄るのは、楽しいひと時である。どんな作家のどんな作品があるのか、ワクワクしながら眺める。そして、面白い作品を見つけた時の喜びは、また格別なものがある。
この小説も、本屋で散策中に目にした。「山田悠介」という名前も知らなかったし、作品も読んだことがなかった。彼の著作が何冊も並んでいたので、まずはどれかを読んでみようと取り上げたのが、この本である。
主人公は荻原健太郎、25歳。アパレル関係の一流企業に就職して、東京に出てきた。しかし、刺激のない毎日に嫌気がさして退職。田舎の母には退職のことを話さないまま、電柱の張り紙で見つけた「何でも屋」で働き始めるという設定である。
何でも屋には奇妙な依頼ばかり飛び込んでくる。「私を見つけて」という依頼メールは謎めいたもの。「ゴミ屋敷になっている自宅を片付けてもらえませんか。報酬は500万円」。半信半疑で現場に向かった健太郎たちを待っていたのは…。こんな話が5話。全くキャラクターの違う同僚たちや、上京してきた母との心の触れ合いもある。
読み始めてすぐ思い出したのは、三浦しをん著の「まほろ駅前多田便利軒」だ。実に面白かった。その「まほろ」には、文章も設定も遠く及ばない。ただ、それなりに楽しめる。いわばB級グルメといったところか。
ネットで調べると著者は現在、33歳。ホラー系の作品でお馴染みという。この本は、独得の毒のある設定ではなく、「青春もの」みたいだ。軽い感じで、若い人たちに人気があるのもうなずける。気楽に、ちょっと読んでみよう。
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