インテリジェンスの語源はラテン語のinterlegoで「行間を読む」の意味。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は「膨大な一般情報を意味するインフォメーションからキラリと光る宝石のような情報を選り抜いて、精緻な分析を加えた情報のエッセンス。一国の政治エリートが誤りなき決断を下す拠り所になるものだ」という。
戦後日本は、国家としてインテリジェンスを統合的に扱う組織すら整備してこなかった。米国の力が減退する中で、中国の尖閣諸島への領海侵入や北朝鮮の核・ミサイル開発など東アジア情勢がきな臭くなっている。日本を取り巻く国際情勢の深層をインテリジェンスのキーワードで、作家・外交ジャーナリストの手嶋龍一氏と、佐藤氏が対談形式で「読解」したのが本著である。
例えば2020年の東京オリンピック開催については、経済的側面から論じられことが多いが、アジア安保に大きな影響があり「尖閣防衛の盾になる」と解説する。飯島勲・内閣官房参与が今年5月に北朝鮮を訪問した。この時、平壌に到着して北朝鮮外務省のアジア副局長が出迎えた写真、金正恩政権ナンバー2の金永南氏との握手の写真からさまざまな情報を提示して分析する。そのほか、安倍政権、プーチン大統領、スノーデン事件の本質などなど、世界の「解読法」が満載されている。
安倍政権は国家安全保障会議(日本版NSC)を創設。その根拠となる特定秘密保護法も国会で成立した。しかし、器はできても肝心なのは人材だ。「組織が機能するかどうかは、有能な人材をこのポストに起用するかどうかで、総理の首相の器量が試される」と指摘する。
日露戦争を戦った日本は、インテリジェンスの豊かな人物「インテリジェンス・オフィサー」が多く輩出された。その中でも特筆する人物として2人が一致して挙げるのが「石光真清」である。私は、「露探」としてロシアに関する情報を生業にした石光の名を知らなかった。早速、調べてみようと思う。
異色の2人の知識、洞察は縦横無尽に広がり、読む人を飽きさせない。私は大学でジャーナリズム論の講座を持っている。その中で、簡単なニュース解説をしているが、この本は大いに参考になった。
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