この欄でも取り上げた「原発ホワイトアウト」の続編である。送電線爆破テロで新崎原発(柏崎狩羽原発がモデル)がメルトダウンする「原発ホワイトアウト」は終わる。本著は、その後が描かれる。日本の原発には致命的な欠陥がある。福島原発の事故を教訓としないまま原発が再稼働され、最悪の事故が再び起こるのだ。そして、東京が終焉を迎える。それが「東京ブラックアウト」である。この国がいつか滅びることを暗示しているように思える。
関東電力の総務部長から日本電力連盟の常務理事に出向している小島巌と、経済産業省資源エネルギー庁次長の日村直史が、前著に続いて暗躍する。目的のためなら良心の呵責も感じず、都合の悪いところは隠蔽し、冷酷にこの国を動かしていく官僚の姿は、霞が関の現役キャリア官僚による告発小説だけに実に生々しく描かれている。
国や電力会社がこれまで言い続けてきた原発の安全神話は、今や誰も信じていないだろう。原発が安いエネルギーではないことも広く知られてきている。自民党の本音が原発推進の政党であることも多くの人たちが知っている。それでもなお選挙になると原発推進の自民党が勝つのか。
電力業界は「モンスター・システム」といわれる巨大な集金・献金システムが出来上がっている。政治家にとって選挙に勝つためには、選挙資金と協力者が必須だ。これらを供出してくれる団体には追従せざるを得ない。モンスター・システムの「毒まんじゅう」が、日本の政治を支配している結果だと、著者は指摘しているようだ。
各章の最初に、既出の新聞記事を引用している。それが本著のストーリーをより現実のように思わせる効果を出している。登場人物もネーミングから現存する人物を思い浮かべることができるようになっている。元官僚が「この小説は95%ノンフィクションだ」と言っているのもうなずける。
「原発ホワイトアウト」とこの本を合わせて読めば、この国が抱える闇がいかに深いかが分かる。1人でも多くの人に読んでもらいたいと思う。そして、目覚めよと言いたい。
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