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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

ラバー・ソウル
井上夢人著(講談社文庫・980円+税)

岡嶋二人という名の推理作家がいた。1982年に「焦茶色のパステル」で第28回江戸川乱歩賞を受賞している。「二人」の名前通り、井上泉さんと徳山諄一さんのコンビによるペンネームだった。名前の由来が「おかしな二人」というのもしゃれている。

この二人は1989年の「クラインの壺」を最後に、コンビは解消している。井上夢人は井上泉さんの筆名である。というあたりは、実は本の解説で知ったことである。「ラバー・ソウル」は音楽ファンなら、ビートルズのアルバムと同じタイトルだと分かる方もいるだろう。各章にはビートルズのラバー・ソウルに収録された曲名と同じ名前が付けられていて、この小説の重要な要素になっているのもしゃれている。

この小説の主人公・鈴木誠は実家が裕福で豪邸に住み、音楽の趣味を仕事に優雅に暮らしている男だ。誰もがうらやむような環境だが、誠は幼いころ病気のせいで両親からも顔をそむけられる容貌というハンディキャップを背負っている。自分には何の責任もない容貌によって、存在自体が否定されているように生きてきた。

36年間、女性にも無縁で、何度も自殺を試みた。そんな主人公と社会の唯一のつながりは、洋楽専門紙でのマニアをもうならせるビートルズ評論だった。その雑誌の撮影現場で、誠は美しいモデルの美縞絵里と出会う。そこから悲劇が始まる。

巧妙な盗聴や盗撮など、気分が悪くなるようなストーカー行為。彼女に近づく男たちを「始末」していく誠の絵里に対する異常な執着とゆがんだ愛情が、当事者2人と関係者の証言という形で書かれている。

そして、最後に衝撃の結末を迎える。それは読んでのお楽しみだが、何とも言えない読後感である。今まで読んだサスペンスと一味違うのだ。と、もったいぶったが、とにかく推理ファンにお勧めしたい。

【ジャーナリスト 枡田勲 2015/4/3】


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