この欄に2年前、「下町ロケット」の書評を書いた。「下町ロケット2 ガウディ計画」はその続編である。前作は、ロケットのバルブ作りがメインだったが、続編は医療機器がテーマ。東京都大田区の中小企業である佃製作所は、「ガウディ計画」と名付けて人工心臓、人工弁の開発に挑戦する。
権力闘争や心理戦が繰り広げられるのは、前作と同様だ。「白い巨塔」の大学医学部で権力を握る教授と、医療機器の認可をする厚生労働省官僚、企業が癒着して、主人公・佃航平の前に立ちはだかる。これでもかこれでもかと理不尽な仕打ちを受けるが、それを一つ一つ跳ね返して乗り越えていく。最終的にはガウディ計画が成功する勧善懲悪の物語である。
「人間ってのはな、マイナス思考に陥るのは簡単なんだよ。それに比べたら、プラス思考のいかに難しいことか。苦しいときこそ、人間の真価が問われるんだ」
「スマートにやろうと思うなよ。泥臭くやれ。頭のいい奴ってのは手を汚さず、きれいにやろうするきらいがあるが、それじゃダメだ」
こんな佃の語る熱い言葉が次々と出てくる。青臭いきれいごとを言っているように見えるかもしれないが、気恥ずかしいと思ってはいけない。かつてロケット打ち上げを目指す技術者だった佃は、モノ作りに対して儲けるだけではなくて「夢」を大事にしている。それこそ、今の日本に必要なことではないか。
昨年、この「下町ロケット」がテレビドラマ化されて、視聴率は20%を超える人気を集めた。主演・阿部寛の熱い演技は、見ている方も胸が熱くなった。テレビは「下町ロケット」と「下町ロケット2 ガウディ計画」を合わせた11回連続のドラマで、最終回が年末12月27日の日曜日に放映された。
ドラマが始まってから続編を書店で求めた。ドラマチックな演出のテレビドラマと比べて、原作はあっさりしているが、専門用語が分かりやすく説明されていて、話の中にスーッと入っていける。昼に読み始めてから、その日の内に一気読みした。前回の書評に「混沌として閉塞感のある日本社会で、多くの人たちに夢と希望を与える作品である。読後感のこれほど爽やかな書を、最近は知らない。文句なしにお勧めしたい」と書いた。続編も同じようなしめの言葉を贈りたい。
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