清廉潔白で人格者で「神様」のような教師、坪井誠造が亡くなった。悲しみに包まれ、みんなが涙する。その通夜の席で、先生にかかわった人たちが思い出を語るという形で進んでいく。
参列者が「神様」を偲んでいる中で、「誰からも好かれるいい人が、実は」と疑惑が持ち上がる。タイトルを考えれば、当然、予想されたことではあるが、殺人疑惑、ストーカー、盗聴疑惑など次々と不審なことが明らかになっていく。後輩教師、教え子、今どきのギャル、近所の主婦とお笑い芸人、坪井の美しい娘…。その推理が2転3転する。その展開に、ついつい引きこまれていく。
著者は元お笑い芸人という。読み手の反応を意識した物語にそれが生かされているように思える。独白のテンポがよくて読みやすく、クスリと笑わせるコツも心得ている。
これが「神様の裏の顔か」と思わせておいて、最後のどんでん返しがくる。真相は二重人格の娘、ということになる。このあたりは読者の評価が分かれるかもしれない。この「落ち」は、私の感想としては少し乱暴かなと思う。それでも、独白で進める構成も含めて、結構楽しめた。
この作品は、第34回横溝正史ミステリー大賞を受賞した。著者のデビュー作というのだから、これからが楽しみな作家である。
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