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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

ジェノサイド
高野和明著(角川文庫・上600円・下640円+税)

今の時代、生物の誕生から進化までのスピード、情報技術の発達速度、エネルギー使用率や気候変動率数の上昇などが著しくなっているように思える。脳の肥大化もそれに沿って大きくなっていく。もしかすると現代人の倍の重さを持つ者が現れるかもしれない、というのは否定できない――立花隆著「文明の逆説」に書かれているこんな内容が、作品のモチーフになっているようだ。

プロローグで「人類絶滅の可能性 アフリカに新種の生物出現」という文言が登場する。新種の生物が、つまり現代人の何倍もの脳を持つ者ということだ。その謎をめぐって壮大な物語が展開される。アメリカの情報機関が新種の生物という情報を得て、米大統領が機密作戦を発動させる。

難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、米特殊部隊から民間の軍事会社に転じた傭兵にイエーガー。彼のもとに届いた極秘任務「人類全体に奉仕する仕事」は詳細が明かされないまま。イエーガーはチームの一員としてアフリカのコンゴの密林地帯へ向かう。そこで待ち受けたのは、人間という生き物が作り出した、この世の生き地獄だった。ジェノサイド(大量殺戮)だ。人類はこれまで何度も大量殺戮を繰り返してきた歴史がある。

一方、東京では、創薬化学を専攻する大学院生の古賀研人が、急死した父親から一通のメールを受け取る。その文面を手掛かりに、ウイルス学者だった父が密かに研究していた実験を受け継ぐ。無関係だったイエーガーと研人の2人の運命が交錯し、そこにホワイトハウスの政治家や研究者が絡む。コンゴ、東京、ワシントンで動き出した流れが、やがて3本の激流となっていく。そして、人類の命運を賭けた戦いは、絶体絶命の危機を乗り越えていく。

こんな解説では、たぶん読者は理解できないだろう。だが、とにかくスケールの大きさに圧倒される。「超ド級エンタテイメント」というコピーが掛け値なしであることは保証したい。もちろんフィクションだが、その緻密な構想力にノンフィクション以上のリアルティを感じる。人間は人間を殺す。半面、人間は人間を信じ、助け合う。この作品のテーマは「人類の存続」である。ただ、人類の軌跡は自然を搾取してきた歴史でもある。その末路は「文明の崩壊」だという文明論が込められているように思えてならない。

【ジャーナリスト 枡田勲 2017/4/7】


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