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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

お殿様、外交官になる
熊田忠雄著(祥伝社新書・840円+税)

大学時代の同級生にニッポン放送の放送記者をしていた友人がいる。会社を退職してから、早い時期に世界各地へ飛び出した日本人の足跡などをテーマに、執筆活動をしている。近著がこの本である。「今回は広島藩の浅野公も取り上げているので、よろしく」と賀状にあった。

副題が「明治政府のサプライズ人事」。肥前佐賀藩主の鍋島直大(なおひろ)に始まり、安芸広島藩主・浅野長勲(ながこと)、美濃大垣藩主・戸田氏共(うじたか)、阿波徳島藩主・蜂須賀茂韶(もちあき)、和泉岸和田藩主・岡部長職(ながもと)の5人元藩主と、公家華族柳原家の柳原前光(さきみつ)、幕臣で賊軍の首謀者から転身した榎本武揚(たけあき)の7人を取り上げている。

この7人を見ると、共通しているのは名前の読み方が難しいことである。安芸広島藩42万6千石最後の藩主が「浅野長勲」であることも、「ながこと」と読むことも、イタリア駐在公使をしていたことも知らなかった。地元の広島には浅野藩庭の「縮景園」も残っている。改めて歴史をたどってみたいと思うようになった。

江戸から明治への時代の変わり目。チョンマゲを結い、帯刀し、攘夷を叫んでいた大名が、10年余には断髪、廃刀し、外交使節として海外に赴いた。近代国家への歩みを始めた明治新政府が、外交経験もない「素人」を外交官として送り込んだのである。言葉も知らない「お殿様」が新しい環境にどう適応していったのか。夜会、晩餐会、国王との謁見などの“国際デビュー”には、思わぬ珍現象が起きる。丹念に資料をあさり、さまざまなエピソードを拾い上げたこの作品は、歴史を切り取ったジャーナリストらしい視点が感じられる。

筑波山ろくの茨城県桜川市真壁に夫婦の石像が立つ。そこには、侯爵浅野長勲公と浅野綱子尊夫人と刻まれている。浅野家の始祖長政が徳川家康から隠居料として真壁・筑波一帯を拝領し、真壁藩5万石が誕生した地だ。筆者は、偶然その街を通っていて2体の立像を見た。そして、96歳まで長生きした長勲の生涯を調べてみたのが、執筆のきっかけだったという。

桜川市真壁といっても全く知らない地で、イメージはわかないが、石像を一度拝見したいと思った。多分、そんな機会はないだろうが、そう考えさせられた本である。

【ジャーナリスト 枡田勲 2018/3/12】


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