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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

スカラムーシュ・ムーン
海堂尊著(新潮文庫890円+税)

医療を扱ったドラマ「チーム・バチスタの栄光」は、テレビでヒットした。その作品が著者のデビュー作で、2006年の第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞したのは、この本の解説で知った。著者の作品を読むのは「スカラムーシュ・ムーン」が初めてである。前回の当欄で中山七里に「はまった」と書いたが、海堂尊にもはまりそうである。読む楽しみがどんどん増えるということは、何て幸せなことだろう。

新型インフルエンザ騒動を描いた「ナニワ・モンスター」の続編という。今度は、インフルエンザの浪速攻撃に失敗した警察庁が仕掛けた「ワクチン戦争」の攻防。主役のスカラムーシュ(大ボラ吹きの道化役)彦根新吾が浪速府知事の村雨弘毅とともに、霞が関の陰謀に勝負を挑む過程が描かれている。

第1部「ナナミエッグのヒロイン」は、加賀市にある養鶏ファームの一人娘、名波まどかの青春物語から始まる。青春小説かと思いながら進んでいくと、いつの間にかインフルエンザ・ワクチンの話につながっていく。このあたりの導入は、実に見事といえる。

異端の医師・彦根は、ワクチン製造に必要な有精卵を求めて加賀へ飛び、さらに「日本3分の計」(3分割)の第一歩である西日本連合・浪速共和国独立のための資金調達にヨーロッパへと旅立つ。彦根は、死因究明に新しい視点を開く「死体の画像診断(Ai)」を提起し、霞が関と敵対関係にある。クライマックスは、Aiセンターをつぶそうとする警察側の軍師である原田雨竜と、彦根の壮絶な対決だ。日本の医療の危機を救えるのかどうか、メディカルエンターテイメントの迫力に圧倒される。

先に「ナニワ・モンスター」を読んだ方がより分かりやすかったかもしれないが、それを切り離しても楽しめる作品だった。権力に敢然と立ち向かう彦根の姿勢は、現実の世界でもAiセンター提起で闘ってきた著者の姿勢と重なる。改めて、「ナニワ・モンスター」や「チーム・バチスタの栄光」を読みたいと思った。

【ジャーナリスト 枡田勲 2018/5/16】


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