最近、健康問題を扱ったテレビ番組が目立つ。多くの方が、そう感じているのではないか。高齢化社会が進み、病気や健康問題に関心が深い、という世の中を反映しているのだろう。書店に並ぶ本にも、同じような傾向が見受けられる。本書もその一つである。
いままで体にいいことだと信じて続けてきたことが、実は間違いだった、と言われればショックだろう。健康業界では、明らかなウソや怪しげな情報がたくさん流れているようだ。迷信や風説のたぐいもある。一部の医者やマスコミが怪しい情報の発信源になっている場合もある。ネット社会になって、ますます情報の真偽を確かめるのが難しくなっている。健康や医学の研究は日進月歩で、「常識」と思っていたことが間違いだったとこともある。著者は医学博士で、タイトルの前に「ここまでわかった! お医者さんだけが知っている」とただし書きが付いている。
本著の中でも、「水をたくさん飲めば、血液はサラサラになる」「風邪は薬を飲んだほうが早く治る」「コラーゲンを摂ると美肌になる」「ビタミンCで風邪が予防できる」などは“ウソ”だという。まさに「常識のウソ」である。健康情報の中には、人から人へと伝わるうちに拡大解釈や推測、思い込みなどがどんどん加えられて広まっていくケースが少なくない。
一番大切なのは、流行に流されたり、影響力や発言力のあるものに丸め込まれたりしない姿勢。そして、自分の眼でウソを見抜いていく姿勢ではないか―と米山先生は指摘する。とはいっても、ウソに惑わされない姿勢を築くことはなかなか難しい。ベストセラーになっている「医者が教える食事術」(牧田善二著)も、これまでの常識が間違っていたかを著している。この本も併せて読んでみることをお勧めしたい。
かつて、テレビの健康番組「発掘あるある大事典」で“納豆ダイエット”が放映された。翌日、スーパーの納豆が品切れになる騒ぎまで起きた。だが、ウソの実験ややらせをしていた過剰演出が発覚して大問題になり、番組は打ち切りになった。納豆は健康食品だと思う。だが、そればかり食べていれば体に良いということではない。健康本を読みながら「過ぎたるはなお及ばざるごとし」という“常識的な結論”に至った次第である。
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