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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

宇喜多の楽土
木下昌輝著(文春文庫・770円+税)

昨年から、中国新聞のセレクト紙面に月2回連載を書いている。タイトルは「兵どもの夢の跡―中国地方の山城を歩く」。日本に城は数万あるといわれているが、そのほとんどは戦国時代に築かれた山城だ。山城跡の曲輪や堀、土塁、石垣などの城郭遺構を探索しながら訪ね歩いて、歴史ロマンに思いをはせる連載である。

そのため、戦国時代の小説とみると、思わず手に取ってしまう。この本も、書店で見つけて、一気に読んでしまった。中国地方といえば、安芸高田市の郡山城を本拠にした毛利氏を抜きには語れない。毛利元就を調べていると謀略家として悪名高い宇喜多直家はよく登場してくるが、直家の嫡男の秀家についてはこの著書で初めて知ることばかりだった。

父直家の死後、秀家は11歳で家督を継いだ。正室は前田利家の4女で豊臣秀吉の養女であった豪姫。秀吉の寵愛をほしいままにした豪姫をめとったがゆえに、秀吉に引き立てられて57万4千石の大名にまで立身する。そして、秀吉の死後には5大老の一角にまで上り詰めた。

だが、その生涯は波乱万丈だった。領国全域の検地にともなう家臣団の内乱「宇喜多騒動」に翻弄される。そして、内乱がおさまらぬうちに関ヶ原の合戦に巻き込まれていく。関ヶ原では石田三成に与し、西軍の主力部隊として戦って敗れる。落ち延びて畿内に潜伏した後、薩摩の島津氏を頼って身を隠す。その後、徳川幕府の伏見に出頭して駿府に移され、死罪を免れて八丈島に流刑となった。

流罪人の秀家は、絶海の孤島で余生を送ることになる。そして、およそ50年、明暦元年(1655年)に84歳の天寿を全うして没する。その時、将軍家は4代目、家綱の治世だった。本著はこの秀家の生涯を描いている。どこまでが史実にのっとっているかは分からないが、逆境にあっても理性を失わない心優しき秀家として描かれている。

著者のデビュー作は宇喜多直家を描いた「宇喜多の捨て嫁」(2012年)。オール読物新人賞を受賞し、大きな評判をとった。こちらのほうを先に読むのが順序だが、逆にたどってみるのも面白いかもしれない。それにしても、戦国時代にタイムスリップできる歴史小説は興味が尽きない。

【ジャーナリスト 枡田勲 2021/1/21】


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