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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のジャーナリストによる “書評”コーナー!
「書物の魅力」を 月1回のペースでお届けします。

舟を編む
三浦しをん著 (光文社・1500円+税)

2011年に発刊され、翌年に本屋大賞を受賞した作品である。2013年には松田龍平主演で映画化された。10年以上も前の作品を、今取り上げるのは理由がある。池田エライザ主演でテレビドラマ化され、今年2月から毎週日曜日の午後10時から、NHKBSで放送中なのだ。

「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味で、この書名が付けられている。玄武書房に勤める馬締光也が、新しく刊行する辞書「大渡海」の編集メンバーとして辞書編集部に迎えられ、個性豊かな編集者たちの辞書づくりの世界に没頭していく姿を描いて作品である。

作品名は知っていたが、残念ながら読んでおらず、映画も見ていなかった。今回、テレビドラマを見て、辞書作りに全精力を傾ける人たちの姿に感動した。何ともいえないほど後味が良く、最近見たドラマの中でも秀逸だと思う。日曜日夜が待ちきれないほどである。あわてて、本を取り寄せて読んだ。それも、一気に読んでしまった。

テレビドラマでは、玄武書房のファッション雑誌編集部から辞書編集部に異動した岸部みどり(池田エライザ)の視線で物語が進む。最初は馴染めなかった辞書作りに、どんどん魅入られていく過程が描かれる。馬締(まじめ)の名前のまま馬鹿正直で変人だが、辞書作りの中心になる馬締を演じる野田洋次郎がいい味を出している。辞書監修者役の柴田恭兵をはじめ、岩松了、向井理、前田旺志郎、美村里江、渡辺真起子らの脇役がまたいい。

ドラマの脚本は原作と少し違っているが、「辞書作りへの熱い思い」は両方から良く伝わってくる。そして、ドラマを見ても原作を読んでも、辞書がいかに長い時間と知力、労力の結晶であるということを思い知らされる。辞書は本当にすごいものである。奥が深く、魅力にあふれ、面白い。

デジタル化が進み、紙の本は売れない時代になった。それでも、「舟を編む」を読めば、改めて紙の辞書を見直し、開いてみたいと思うだろう。1人でも多くの人に読んでもらいたい本である。映画も見たいと思う。

【ジャーナリスト 枡田勲 2024/3/28】


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