暁天の星
椹野道流著(講談社文庫・760円+税)

ライトノベル小説の「鬼籍通覧シリーズ」の第1巻。このシリーズは「無明の闇」「壺中の天」「隻手の声」「禅定の弓」「亡羊の嘆」「池魚の殃」「南柯の夢」と8巻まで続く。ミステリーというより、オカルトの傾向があり、「法医学教室オカルトファイルシリーズ」とも呼ばれている。ライトノベルはほとんど読んだことがないし、オカルトはあまり好きではない。それでも、たまには未知の世界ものぞいてみよう、と書店で選んだのがこのシリーズだった。

大阪О医科大学法医学教室に、ビジュアル系の風変わりな新入生がやってくる。名前は伊月崇。医大卒業後、医者である叔父の知人で学長を務めるО医大の大学院入試を受け、入学してきた。伊月をしごく先輩法医学者・伏野ミチル、 川柳もどきの忠告がクセの法医学教室教授の都筑壮一、足掛け30年3代の教授に仕えてきた技師長の清田松司、少年の面影を残したような技術員の森楊一郎、女性秘書の住岡峯子、伊月の同級生で新米刑事の筧兼継―とユニークな登場人物の言葉の掛け合いがなかなか面白い。

ある日、電車に身を投げた女性の遺体が運ばれてくる。さらに、車に轢かれた女性も。この2人の遺体には、不思議で奇妙な共通点があった。ある時は混雑した駅のホームで、ある時は黄昏の坂道で、突如、彼女たちは死に向かって身を投げた。周りには誰もいない、という目撃証言もある。状況的には自殺なのだが、証言者は「まるで突き飛ばされたみたい」「変に、髪が1カ所ごっそり抜けている」「何かにおびえていた様子がある」と口をそろえる。

伊月とミチルの2人は、気になって独自に調べ始める。その中で、昔起きた誘拐事件との関連性を見つけ出す。これ以上勝手な行動は許されないが、2人は好奇心から調べをやめることができない。伊月とミチルの名コンビが事件の真相に迫る―とこんなあらすじはミステリーそのものだが、事件解決ではなくて最後はオカルトの世界に…。

奇妙な感覚で読み終えた。このあとのシリーズを読まないとこのモヤモヤは解決しないのだろうか。著者が法医学教室に勤務する医師とあって、遺体の描写や解剖シーンが目に浮かんでくるようなリアルさがある。それだけでも読んだ価値があると思う。さて、シリーズの続きを読もうか、どうしようかと迷っている。

【ジャーナリスト 枡田勲 2021/7/27】