小説 天気の子
新海誠著 (角川文庫 600円+税)

アニメ映画「君の名は。」は、記録的な大ヒットで社会現象にもなった。昨年公開されたアニメ映画「天気の子」も、大ヒットして話題を集めた。その「天気の子」の新海誠監督が自ら執筆した原作小説である。映画と原作小説の場合、「映画を観るまえに読んだ方がいいのか、読んでから観るのがいいのか、については両論あるだろう。今回、私は映画をまだ観ていない。

物語は、伊豆七島の最南端にある神津島で暮らす高校1年生、森嶋帆高が家出して、東京を目指すところから始まる。フェリーで須賀圭介に出会い、雑誌にオカルト記事を書く仕事を手伝うため、須賀事務所に住み込む。異常気象で長期間、雨の日が続き「100%晴れ女」の都市伝説が流れていた。ある日、都会の片隅で不思議な少女、天野陽菜と出会う。この少女こそ、祈るだけで空を晴れにできる「晴れ女」だった。この超能力を商売にしようと、サイトを立ち上げる。最初は順調にいっていたが、陽菜がテレビに映ったことから注文が殺到して休業に追い込まれる...。

天候の調和が狂っていく時代に、少年と少女運命に翻弄されるストーリーである。それにしても、ファンタジーなのかSFなのか、はたまた少年と少女の恋愛小説なのかよく分からないが、不思議な感覚にされる小説である。映画の本編制作と並行して小説を書いた、という。テンポもよく、さりげない言葉が生き生きとしている。時おり映像を想像させ、これまでの小説家とは違った感覚になるのは、この監督の感性のせいだろうか。

例えば、こんな言葉がさりげなく出てくる。「僕自身が不完全であるのと同じように、大人たちもまた等しく不完全なのだ。皆がその不完全さを抱えたまま、ごつごつと時にぶつかりながら生きているのだ」「世界なんてさーどうせもともと狂ってんだから」

作品では、異常気象による長雨で、東京の海沿いは水没してしまう。地球温暖化の影響で、昨今は豪雨災害や台風の被害などが頻発している。監督がそれをどこまで意識しているかどうかは知らないが、将来を暗示しているようにも思える。この欄で昨年末に取り上げた「4月になれば彼女は」の著者・川村元気は映画「天気の子」のプロヂューサーでもある。両者に似た空気を感じるのは私だけだろうか。映画も観たいと思う。

【ジャーナリスト 枡田勲 2020/2/6】