宝島
真藤順丈著(講談社 1850円+税)

「戦果アギヤー」という言葉を、この本で知った。「戦果をあげる者」という琉球語。戦後、米軍占領下の沖縄で生まれた。元来は沖縄戦の時、敵のアメリカ軍陣地から食料などを奪取することを指していた。戦後になり、生活基盤を失った住民たちはアメリカ軍からの配給に頼っていた。戦争中の名残でアメリカ軍の倉庫から物資を略奪する行為が横行していた、という背景がある。

地上戦が行われた沖縄では、20万人が死亡したとされる。多くの民間人も命を落とした。生き残った人たちも土地や家など生活基盤を奪われ、厳しい生活を余儀なくされた。この時期、沖縄人の生活を支えたのが戦果アギヤーと密貿易だった。

戦果アギヤーのリーダーは「オンちゃん」。雄々しい眉毛、角張ったあご、その美(ちゅ)らになびく黒い髪―のウチナー面(ヂラ)らしい20歳の若者だ。オンちゃんは米軍基地の倉庫に押し入って連戦連勝の「戦果」をあげた。奪った物資は、身内だけでなく地元の人たちに配り、コザの住民からは英雄視された。オンちゃんの親友のグスク、オンちゃんの弟のレイ、オンちゃんの恋人のヤマコ。幼馴染の4人が、本土復帰に向かう激動の20年を力強く生きていく青春模様が描かれる。

3部に分かれ、第1部「リュウキュウの青」(1952−1954)は嘉手納空軍基地に侵入した場面から始まる。物資を運び出して成功したと思った瞬間、警笛がなり米軍に追われる。グスクとレイは捕まって収容所に入れられる。「生還こそがいちばんの戦果」といっていたオンちゃんは、その夜、突然消えた。第2部「悪霊の踊るシマ」(1958−1963)は残された3人のそれぞれの戦後を描く。グスクは琉球警察の刑事になって、米兵の女性暴行殺人事件の捜査に当たる。レイはコザに戻り、地回りのヤクザのボスに。

第3部「センカアギヤーの帰還」(1965−1972)は、コザの暴動でクライマックスになる。1970年12月、コザの米兵が日本人を轢いた事件をきっかけに暴動が起きる。住民の不満が爆発したコザ暴動という史実を踏まえた物語が繰り広げられる。オンちゃんがどうなったかは最後に明かされる。

本著には、沖縄の人たちが流してきた血や涙、におい、色、肌触りなどすべてのものが感じられる。濃密な沖縄の叙事詩とも言える。東京生まれの著者が、沖縄の歴史に真正面から向き合った作品。戦後74年経った今も在日米軍基地の7割が存在するその歴史を、もう一度思い起こしたい。

【ジャーナリスト 枡田勲 2019/4/30】