一度も手にしたことがない「週刊金曜日」を二週続けて買って読んだ。十一月十五日号と二十二日号だ。もちろん、「曽我ひとみさんの家族に単独会見」の記事が目当てである。
曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんと長女の美花さん、二女のブリンダさんの三人に平壌市内のホテルでインタビューした内容は、そんなにびっくりするようなものではない。
蓮池さんや地村さん両家族と違って、曽我さんは子どもに自分が日本人だと教えている。子どもの名前を一人は日本名、もう一人はアメリカ名というのがその証だろう。ただ、へーっと思ったのは、ジェンキンスさんが「日本に行く二週間前に、妻から説明を聞いたが、袋に押し込められて運ばれたとは到底信じることができなかった」と話したことぐらいだ。
美花さんは「今は早くお母さんに帰ってきてほしい。お母さんが帰ってくれば安心して、日本にも行けるし、おじいちゃんたちにも来てもらうことができる」と言う。娘が早くお母さんに会いたいというのは当然だろう。
曽我さんは週刊誌を見て「身を引き裂かれるようだ」と悲しんだという。確かにひとみさんを傷つけることにはなったが、北朝鮮に残した家族が元気でいるということだけは、三人が映った写真から確認できたのではないか。
このインタビューに対し、週刊金曜日バッシングが吹き荒れている。「なぜ曽我さんを傷つけるようなことをするのか」「北朝鮮の宣伝に利用されているのではないか」。他の週刊誌が過激な見出しで非難し、家族の会も小泉首相も批判する。ちょっと異常である。
横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさんのインタビューにしても、曽我さんの家族のインタビューでも許可した北朝鮮当局の何らかの思惑、意図があることは容易に想像できる。プロパガンダは承知の上で、決定的に少ない北朝鮮情報を伝えるのはジャーナリストの使命である。しかるに、異論や少数意見を認めない空気が日本社会に広がっているのは、「非国民」とレッテルを張られたまるで戦時中のようだ。はっきりいって怖い。これでは言論の自由がない北朝鮮と同じではないか。
どんな情報でも、見方によれば考える材料になる。もう少し冷静になって、議論すべきだと思う。
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