イラク戦争真っ直中の3月30日、日本中央競馬会のG1レース、高松宮記念が中京競馬場であった。イラク戦争と競馬は関係あるの?と思われる方が多いだろうが、今回は多いにあったのである。
3月29日にアラブ首長国連邦のドバイ・ナドアルシバ競馬場での国際レース、ゴールデンシャヒーン(G1) に出走予定だったアメリカ馬が、イラク戦争の関係で出走を取りやめた。この国際レースは、世界一賞金が高いレースとして知られ、日本からも「ゴールドアリュール」という名前の馬が出走を予定していたが、こちらも危険というので見合わせた。
それだけなら、とりわけ珍しいことではなかったが、ドバイ行きを断念したアメリカの2頭が高松宮記念に出走してきたのである。その一頭の名前が「ディスタービング
ザ ピース」。DISTURBING THE PEACE。直訳すると「平和を乱すもの」となる。偶然とはいえ、あまりの符号に笑ってしまった。
おまけに、ゴールドアリュールに乗る予定だった日本のトップジョッキー、武豊騎手に依頼がきて、ディスタービングザピースに騎馬した。競馬評論家の井崎修五郎さんが、迎え撃つ日本の総大将がショーナンカンプで「カンプ」は「闘争」だから、「競馬の世界でも物騒な戦い」とサンデー毎日のコラムに書いていた。
高松宮記念のレース結果は、逃げたショーナンカンプがつぶれて7着、ディスタービングザピースも13着の惨敗だった。さてこの結果を、どう解釈すればいいのやら。もう一つ付け加えれば、今年の牝馬戦線は4戦全勝だったG1馬、ピースオブワールド(世界平和)
が故障発生で戦線離脱し、混戦模様である。これもまた、今の世の中と符合していて妙な気持ちにさせられる。
ちなみに、イラクの戦場に近いドバイでの国際レースは予定通り行われた。競馬がこころおきなく楽しめる世界に早く戻ってほしい、と願わずにはおれない。
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