「その通り」と思わず喝さい、久々に胸がすっとした。東京大大学院教授の高橋伸夫さんが「成果主義は弊害ばかり」と説いた、中国新聞のインタビュー記事である。
個人の仕事や実績を評価して、賃金や人事に反映させる「成果主義」が、今や6割の会社が採用しているそうだ。生産性が上がるというのが「うたい文句」である。だが、高橋さんは「成果主義が自明の理、というのは多分、迷信ですよ」とずばり言う。「お金で働く気になるというデータはありません。お金でやる気がなくなるということもある。仕事は本来、面白くなくてはいけません」とも。
個別に目標設定をして、客観的に評価するという制度だが、達成しようよ思ったら、低い目標設定になりがちである。高い目標を掲げて達成されないより、低い目標にして達成した方が高い評価になるからだ。しかも、営業職場ならまだ目標が数値で表れる。数値で表現しにくい職場だと、達成度を評価すること事態が難しい。
実は、私の職場も最近、成果主義を取り入れている。現場の悩みは、ほとんど差のない大多数の人に無理やり差をつけなければならない、ということである。差をつけると給料にはね返るから、人間関係がどうもしっくりいかない。
成果主義というのは、どこかのコンサルタント会社の「受け売り」である。高橋さんは「優秀な社員は賛成します。反対するのはダメ社員というわけで、だれもダメ社員になりたくないから疑問があっても反対しにくい」と喝破する。私自身、この成果主義はおかしい、と不満を持っているが、論理的な反論理由を持っていないので、高橋さんの言うように反対できないでいる。
中間管理職の仕事は、評価よりも仕事の楽しさを教えることだろう。いかに仕事にやりがいを感じるかが、成果を上げるポイントである。高橋さんが出版した「虚妄の成果主義」(日経BP社刊)を、企業の幹部や人事担当者は読んでもらいたい。
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