最近の小泉純一郎首相を見ていると、人間というものは、しょせんそんなものか、と思ってしまう。
3年前の小泉さんは、新鮮だった。これまでの政治家とは違った何かを感じたのである。それは私だけでなく、国民の多くがそう感じていた。短いフレーズでズバッと本音の言葉を吐く。いわく「改革なくして成長なし」「自民党をぶっつぶす」「感動した。傷みに耐えてよくがんばった」…。
根回し政治、金権政治を見飽きた国民は、金にクリーンで権力者らしくない小泉さんに期待し、日本中が小泉ブームに沸いたものだ。そして3年。ブームが去って、見えてきたのは「権力者のおごり」である。「なんじブルータス、お前もか」。
参院選で小泉総裁率いる自民党は終盤、厳しい情勢と伝えられると、拉致被害者の曽我ひとみさんと夫ジェンキンス、娘との再会を参院選前に設定するなど、なりふり構わぬサプライズ作戦をとった。しかし、自民党は野党第1党の民主党に敗北。その責任をとるどころか、「逆風の中で国民は、(公明党と合わせた)与党に安定多数を与えてくれた」と小泉さん。今回の改選数は121議席。自民49、公明11合わせても60議席と過半数を割っている。3年前の参院選で圧勝した数字があるので、安定多数になっているだけ。それを、敗北を認めず、相変わらずの詭弁(きべん)を弄されては、うんざりしてしまう。
最近の小泉さんは、「マスコミは批判ばかりする」と、ことあるごとに言うようになった。「権力は絶対に腐敗する」と言われるが、長くなればなるほど謙虚になる権力者を、残念ながら見たことがない。マスコミ批判を始めたこの政権も末期症状である。
期待が大きかっただけに、失望も大きい。
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