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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
コラム 広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー!
月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

花の記憶

 年々咲くのが早くなって、これも地球温暖化の影響かと思っていた桜が、今年はようやく開き始めた。広島県内は3日に開花宣言。例年より5日遅い。昨年と比べると、なんと15日も遅い。そういえば、昨年のこの時期はもう散っていた。自然の営みは、ままならないところがいいのかもしれない。

 桜の中でも一番ポピュラーなのはソメイヨシノ。ほんのり淡いピンク色の花びらは、気品があって。はらはらと花びらの散る桜の木の下で、杯を傾けるのは、まさに至福の時である。何もかも忘れてぱっと大騒ぎするのもいいが、誰もいないところで静かに愛でるのもまたいい。

 桜にはさまざまな思い出がある。

 瀬戸内海の島に小学生のころみんなでソメイヨシノを植えた。瀬戸の海を見渡す丘にある桜並木は、今年も満開の花びらをつけただろうか。故郷の桜を見ると、小学校時代の出来事が走馬燈のようによみがえってくる。

 3年ほどいた東京時代、春になると家族であちこちの桜の名所を訪れた。なかでも、世田谷の砧公園。元ゴルフ場跡の広い芝生の中にある大きな桜を、寝転がって眺めた。木洩れ日の向こうに、芝生を駆けめぐっていた子どもたちの光景を、今でも鮮明に思い出す。

 桜以外にも記憶に残る花がある。白い木蓮である。故郷の家の前に、大きな木蓮の木があった。その花が開くころ、瀬戸内海の島から東京の大学へ巣立った。私にとって、白木蓮は青春のシンボルである。それから、大学を卒業し、就職して結婚。長男が生まれた時、記念樹に選んだのが白木蓮だった。

 転勤族だったので、島の妻の実家に保管をかねて植えてもらった。それから20年余。大きくなった木蓮は、そこの庭を毎年、白く染めている、という。広島市内でたわわに開いた白い花びらを見るたびに、故郷への想いが募る。

【午睡/2005.02.03】


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