このコラム欄で、1年10カ月前に総選挙のことを書いた。前回は「マニフェスト(政権選択)選挙」とも「政権選択選挙」とも言われた。
「民主党は40伸ばして177議席に躍進、自民党は改選前より10減らして237議席に。これだけ見ると民主党の勝ちのようだが、自民党は公明、保守新党の与党3党合わせて275議席と絶対安定多数を確保。政権選択という意味では、自民党が勝ったとも言える。ならば引き分けか、それとも、次の総選挙まで先送りか」
と書いている。まさに、今回は「政権選択」選挙であろう。
だが、不思議な選挙でもある。郵政民営化法案が参院で否決されたのを受けて、衆院が解散・総選挙というのがまず一つ。小泉首相は、「法案の否決は内閣の不信任だから、国民に直接信を問う」と言うのである。日本は議院内閣制で、大統領制ではない。郵政民営化で国民投票をする、というのでは議院内閣制を無視している。これが二つめ。首相は「郵政民営化に賛成か否かを問う選挙」と言い続ける。選挙後、衆院の任期は4年。民営化の是非だけで、政権を選択していいのかどうか。
三つ目が、融通無碍だった自民党が、完全に「小泉党」になったことだ。民営化法案に反対したいわゆる「造反組」は公認せず、対抗馬を立てた。それも、東京10区に小池百合子環境相、静岡7区に元財務相主計官の片山さつき氏、広島6区にはホリエモンこと堀江貴文ライブドア社長。「刺客」「くの一」などという言葉が氾濫する。このやり方は、「小泉独裁政権」でないとできない芸当だ。
ワイドショー的な話題づくりが先行する「小泉サプライズ」がどこまで通用するのか。「小泉劇場も飽きられてきた」「いや、何かが変わるという期待感がまだある」。今のところ、見方が分かれる。パフォーマンスに惑わされず、有権者がどこまで冷静に見極めていくのだろうか。はっきりいって分からない。
忘れてならないのは、4年4カ月の小泉政権が何をしてきたかである。「郵政民営化は改革の入り口」と言っているが、4年たってまだ「入り口なの?」と思ってしまう。確かに「自民党をぶっ壊す」という公約はある意味で正しいかもしれない。だが、医療費負担の増額など、国民に痛みばかり押し付けてきた4年余ではなかったのか。アメリカ型競争社会を目指すのはいいが、弱者切り捨てになってはいないのか。
ここは、有権者が新聞を読み、マニフェストを比べ、よくよく考えて、一票を投じよう。
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