「何でこんな国になってしまったのか」
近所にあるクリーニング取次店のおばちゃんが、ここのところよく嘆くのを聞く。70代になるが、かくしゃくと仕事を続けているおばちゃん。いろんな人たちが出入りする取次店は、情報が集まる。公共生活のルールを守らない社会が進行している状況が、よく見える。
この秋に出版された作家マークス寿子さんの「日本はなぜここまで壊れたのか」を読むと、いちいちもっともだと思う。そして、情けなくなる。
ミニ東京化する地方都市の生活、増え続ける男のように生きたい女、カネがすべての世の中、なぜ見かけだけがもてはやされるのか、便利な社会は進んでいる社会なのか…。見出しの一部を見ても、日本の将来が案じられる。
混雑した列車の座席での大また開き、風上で歩きながらの喫煙、図書館での携帯電話…。公共生活上のルール違反者をどう正すか。マークスさんは英国人ならではの印象的な光景を覚えている。
電車の4人向かいの席。20歳くらいの青年が足を一方に投げ出して占拠していた。ステッキをついた80歳くらいの男性が「足を下ろしなさい」と注意したが青年は無視。すると周りの人たちが「あんた聞こえないの」と次々援護射撃し、青年は従わざるをえなかった。
「英国では、勇気を出した人を孤立させてはいけないという暗黙の了解がある」とマークスさん。日本では、多くの場合、寝たふり、知らん顔になる。日本の病巣を象徴する光景である。どうすればいいのか、といわれても特効薬は見つからない。なんだか暗い気持ちの、年の瀬である。
【午睡/2006.12.27】