浮遊体験をした死海からガリラヤ湖へ。
湖畔にあるキブツのホテルで夕食をとり、一泊した。キブツはイスラエルの共同体で、農業経営だけでなくホテルも経営している。夜半から雨が降っていた。翌日、朝食をとりながら窓から外を見上げると、大きな虹がかかっていた。何だか幸せな気分になる。
午前中、木造船に乗って湖上遊覧をした。ガリラヤ湖はイスラエル国内最大の淡水湖だ。周囲53キロ、最大深度は48メートル、海抜マイナス213メートル。アフリカとアラビアのプレートの境界であるヨルダン大峡谷帯にある。多くの魚がとれるが、有名なのは使徒ペテロがガリラヤ湖の漁師であったことにちなんで呼ばれる「セントピーターズフィッシュ」(聖ペテロの魚)。レストランの昼食にこの焼き魚が出たので、持参した醤油をかけていただいた。醤油は素晴らしい調味料だ。たちまち日本食の味がした。
福音書によると、イエス・キリストの布教活動は、ほとんどガリラヤ湖周辺で行われた。船上からなだらかな丘が望める。イエスがその丘の上で、弟子たちと群集に語った教えは「山上の垂訓」と呼ばれる。「天にまします我らの父よ、願わくは御名のあがめられんことを。御国(みくに)の来たらんことを…」。聖書の「主の祈り」がまとめられているのも、この山上の垂訓の一場面である。
丘の上に「山上の垂訓教会」が建つ。ドームの屋根の下に八角形をした美しい教会だ。そこからガリラヤ湖が見渡せる。湖畔の斜面にはかれんな野の花が咲いていた。2000年前も同じような風景が広がっていたに違いない。イエスが教えを説く情景がよみがえってくるような気がしてしかたなかった。
パンと魚の奇跡の教会、ペテロ召命教会などを見学して、一路エルサレムに向かう。3月末から4月にかけてのイスラエルは、日本とあまり変わらない春の気候だった。大きく違うのは湿度である。乾燥しているイスラエルでは、ミネラルウオーターが欠かせない。常にペットボトルを片手に持って、のどの渇きを潤しながらの旅だった。
いよいよ、首都エルサレムである。巡礼の旅はクライマックスになる。 |