旅の終わりに日本人のガイドさんが、「イスラエル病」という言葉を口にした。
一度イスラエルを旅すると、イスラエル病にかかってしまう。「また行きたい」と、まるで恋の病のように。この病気を治そうと思ったら、イスラエルにやってくるしかない。そうすればすぐに治ります。どうか、重いイスラエル病にかかって、またこちらへ治しにおいで下さい。
昨年春、10日間の聖地巡礼の旅をしてから早くも1年を過ぎた。シナイ山から眺めた朝焼けの山々、広大な砂漠や荒野、不思議な浮遊体験をした死海、野の花が咲き乱れるガリラヤ湖畔、歴史のある教会、そしてエルサレム…。とりわけ、オリーブ山から見たエルサレムの風景は今でも鮮明に刻み込まれている。赤い屋根にイスラエルホワイトの壁で統一された街並み、城壁に囲まれた旧市街地の中央で金色に輝くドーム。霊賛歌を歌ってキリストの足跡を訪ねた旅は、私の人生でかけがえのないひとときだった。
街やホテルなどは全体的に清潔だった。食べ物は特段美味というわけではないが、果物が豊富でおいしかった。乾燥した気候。水分補給をしないと脱水症状になるというので、いつも左手にミネラルウオーターのペットボトルを持って移動した。日差しが強くても、さらっとしていて気持ちがよかった。
日本に帰ってから聖書の世界が違って見えた。「目からウロコが落ちる」という表現はこんな時に使うのだろう。巡礼の旅のいたるところが二千年、三千年前の「聖書の世界」そのままなのだ。「あっ、ここはガリラヤ湖畔のあの場所だ」「イエスが祈ったゲッセマネの園はオリーブの古木が茂っていたなー」。聖書を読むたびに、イスラエルの記憶がよみがえってくる。
どうやらイスラエル病にかかっているようだ。この病を治すには、再び訪れるしかない。「イスラエルの旅」はこの回でひとまず終わる。また、続きの書ける日がくることを祈らずにはおられない。 |