東京に住む島旅作家・カメラマンの河田真智子さん(54)から、一冊のピーアール誌が送られてきた。その冊子には、重い脳障害を持って生まれてきた娘・夏帆さんを抱えながら、ライフワークの島旅を続けてきた21年がつづられていた。
「なっちゃん」はことし21歳になる。仮死状態で生まれ、最初の1年は生きられるかどうか分からない状況だった。今も歩くことも話すこともできず、食事も流動食だ。発作に苦しむことも度々である。誹謗(ひぼう)、中傷もあった。それでも河田さんは島旅の仕事をやめなかった。歩いた島は国内外で三百ほどになる。時には、なっちゃんを特別注文の車いすに乗せて、海外にまで連れて行く。もちろん1人ではできない。夫や多くの友人が支援してくれてのことである。島で見る娘は「生きる喜び」にあふれていた。その表情にどれだけ励まされたことか。
笑顔、泣き顔、発作で苦しむ姿。河田さんは懸命に生きてきた娘の姿から目をそらさず写真に撮ってきた。「元気なうちに生きてきた記録を残しておきたい」と企画した写真展は大きな反響を呼んだ。
4年ほど前、「生きる喜び」と題した写真展を大阪まで見に行った。そこには、なっちゃんと共に闘ってきた河田さんの「親子のきずな」が見事に収められていた。これほど「生きることの尊厳さ」を思い知らされたことはない。
河田さんとは、島好きの人たちが設立した「日本島嶼学会」で知り合った。何かを突き抜けた、明るくてさわやかな人である。
締めくくっている言葉がまた素晴らしい。
「娘を守って生きてきたつもりが、実は娘に支えられて生きてきたのだと気付いた」 |