事前の世論調査で予想はしていた。それでも、現実のことになると感慨も新たである。2009年8月30日の衆院選挙は、歴史的選挙と後世に語り継がれるに違いない。
解散前に303議席あった自民党が119議席まで減らす惨敗。逆に112議席だった民主党が308議席を獲得して圧勝、政権交代が実現した。野党第1党が選挙で過半数を取り、政権を奪取したのは戦後初めて。9月16日、特別国会の首班指名で、民主党の鳩山由紀夫代表が首相に選出された。
今回の選挙は、国民の思いを表現すると、「自民に不満」「民主に不安」というところだろう。そして、結果は「不満」が「不安」を大きく上回った。戦後日本を支えてきた自民党政治に不満を抱く有権者が、「変化」を求めたのである。
政・官・業のトライアングルに象徴される自民党政治は、賞味期限が切れていた。官僚の天下りと特殊法人などにつぎ込まれる税金の無駄、年金、医療、雇用問題などに対する官僚と癒着した政権政党の無策。「もういいかげんにしてくれ」という国民の怒りはマグマにように噴き出した。
ただ、見誤ってはいけないのは、国民は政権を托す民主党に「不安」を抱いたままである、ということだ。官僚主導の打破、予算組み替えによる無駄の排除、子育て支援、高速道路無料化など民主のマニフェストには大風呂敷が広げられている。官僚の抵抗を本当に打ち破ることができるのか、財源確保はできるのか。もし、できなければ期待が大きいだけに、失望も大きくなる。
鳩山内閣はオールスターをそろえた布陣だ。「サプライズ」人事ではなくて、手堅い政権運営を最優先する意図は伝わってくる。せっかちな国民は、新政権の成果を早急に求めるだろう。それにどう応えていくのか、新政権は前途多難である。
がらりと体制が代わるのだから、ある程度の混乱は避けられないだろう。ここは、国民もマスコミも、少し長い目で見守ってやることが必要ではないか。生みの苦しみを支えてやらないと、「死産」になっては元も子もない。「忍耐と寛容」である。 |