ことしの流行語大賞は「政権交代」だった。順当な結果といえる。自民党から民主党へ地殻変動を起こした、あの総選挙をあらためて思い出す。
米国では新しい政権ができて100日の猶予期間を「ハネムーン期間」と呼ぶ。メディアは、できるだけ好意的に見守ろうという時間である。日本の鳩山連立政権が発足しておよそ3カ月。ハネムーンの切れる時が迫ってきた。
ここにきて、さまざまな問題が噴出し始めている。1つは沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題だ。もう一つは首相自らの政治資金の虚偽記載問題である。さらに、民主党の小沢一郎幹事長の強権的な党運営も、いささか鼻白む。
日米が合意している普天間飛行場の名護市辺野古への移設案に対し、民主党はマニフェストで県外・国外移転を掲げている。そこで当初、岡田克也外相は米軍嘉手納基地との統合案を打ち出し、北沢俊美防衛相は辺野古の現行案にこだわった。さらに、米軍グアムや鹿児島県馬毛島など複数の移転案も出て、迷走気味。しかし、いずれも地元合意は難しい状況で、年内決断を断念し、先延ばしになっている。
「自民党政権が13年間もかかって結論が出ない問題を、新政権が3カ月で解決しろというのは酷ではないか」という指摘もある。拙速をさけ、米軍再編問題も含めて、基地問題を根本から考える時ともいえる。安保条約で米国の「核の傘」に守られている日本は、何でも米国のいいなりにならなくてはいけないのか。「対等な日米関係」という鳩山政権は、ここは腰を据えて米国と話し合う必要がある、と考える。
ただ、鳩山政権にそこまで肝が据わっているかどうか、いささか心もとない。首相自らの政治資金の虚偽記載問題がくずぶっているのも、しっくりこない。母親から5年間で9億円の政治資金が流れていたことを、首相は「秘書が処理していたことで、知らなかった」とまるで人ごとのよう。知らなかったでは済む問題ではない。自民党から、民主党の重点政策をもじって「子ども手当て」と皮肉られたのも、情けない限りだ。
そういえば、どこかの前知事が後援会事務局長の政治資金規正法違反について、「私はしらなかった」で押し通したのを思い出す。いずれも「おぼっちゃんだなー」とため息が出てしまう。
とはいえ、政治を変えてくれるのではないかという、民主党への期待はまだまだ大きい。「事業仕分け」に対する支持が高かったことがそれを証明している。国民が「少しは変わってきた」という実感を持てる政治をこれからどれだけできるのか。いよいよ正念場を迎える。
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